歌舞伎、バレエ、ミュージカル…至極の芸術的舞台5選。
歌舞伎座では中村勘九郎・七之助兄弟が父・勘三郎の代表狂言『籠釣瓶花街酔醒』に初役で挑み、演劇ではオリヴィエ賞・トニー賞を総なめにした『インヘリタンス』が日本初登場。
バレエではめずらしい男性が主役の『ホフマン物語』に、ワーグナーが『ニーべルングの指輪』を中断してまで書き進めたオペラ『トリスタンとイゾルデ』、和製新作ミュージカル『ゴースト&レディ』まで話題作が揃いました。
文・佐藤博之
Play ●『インヘリタンス ―継承―』
「自分の本質を理解しない限り、本当の意味で人と人は結び付くことはできないと思います」
そう語るのは演劇『インヘリタンス―継承―』の演出を手がける熊林弘高さん。一本一本を丁寧に演出する熊林さんが約2年ぶりに挑むのは前後篇合計約6時間半に及ぶ超大作。現代のNYを舞台に、差別や抑圧を受けながら生きるゲイコミュニティの人々が真実の自分に出会い、愛を貫いていく、60代、30代、20代の3世代の人間模様が描かれる。
Opera ●『トリスタンとイゾルデ』
ワーグナーのオペラ『トリスタンとイゾルデ』も5時間45分に及ぶ超大作。政略結婚のため護送されるイゾルデは毒薬の代わりに愛の媚薬を口にする。恋したのは婚約者の従者トリスタンだ。赤い月の輝くなか、激しい恋に落ちるシーンは圧巻です。
Ballet ●『ホフマン物語』
英国が誇る振付家ピーター・ダレルの傑作バレエ『ホフマン物語』。流麗で美しいオッフェンバックの音楽に乗せて繰り広げられるのは、主人公ホフマンの華麗な恋愛遍歴。心を奪われる魅力的な3人の女性に加え、様々な役柄に姿を変えて登場する悪魔が重要な役割を果たします。
Kabuki ● 十八世中村勘三郎十三回忌追善 「猿若祭二月大歌舞伎」
そして早いもので十八世中村勘三郎が亡くなって十三回忌。歌舞伎座では中村勘九郎ら中村屋が総出演して追善興行が行われます。昼の部では勘三郎の当たり役『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の佐野次郎左衛門を勘九郎、大役・兵庫屋八ツ橋を七之助が。夜の部では『猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)』の猿若を勘太郎が、『連獅子』の仔獅子を10歳の長三郎がそれぞれ初役で演じます。
「親孝行は何一つできていなかったと思いますが、これで少しは親孝行ができるのかなと思う」(勘九郎さん)
Musical●劇団四季『ゴースト&レディ』
劇団四季はオリジナルミュージカルを新たに製作。原作は『うしおととら』などで知られる藤田和日郎の漫画。看護の仕事を望むも周囲の反対にあい、絶望するナイチンゲールが頼ったのは芝居好きのゴーストだった――。『ノートルダムの鐘』のスコット・シュワルツの演出が観る人に人生の感動と生きる喜びを与えます。心に響く重厚な作品で内面に美と栄養を。
『クロワッサン』1110号より
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