節約できて、便利、楽しい。アイデア次第で一石三鳥。エッセイスト 石黒智子さんの暮らし。
そんな暮らしを送る石黒智子さんに話を聞きました。
撮影・杉能信介 文・嶌 陽子
手作りの腐葉土でハーブを育てる。
「最近新しく挑戦中なの」と石黒智子さんが見せてくれたのは、美しい花殻が敷き詰められた箱。聞けば友人が海産物を入れて送ってくれた発泡スチロールの箱を何かに使えないかと考えた結果、腐葉土を作ることにしたそう。
「今までは庭の一角で作っていたのだけれど、せっかくのきれいな箱なので枯葉を敷き詰めて、その上に庭の植物の花殻を重ねて彩りも楽しんでいます。節約のためにではなく、楽しいからやっているのだけれど、これなら市販の腐葉土を買う必要もないし、箱や枯葉、花殻もゴミに出さずにすみますよね」
必要なものはすぐに買わず、身の回りのもので作ってみる。
身の回りのものを工夫して、暮らしを便利に、快適に。これが、石黒さんの長年のテーマだ。
何かが必要になったらすぐに買おうとせず、まずは自分が持っているものを組み合わせて作れるかを考えてみる。その結果生まれたのが、「これと同じものが欲しい!」と思うほど機能性とデザインに優れた日用品の数々。
空き瓶を使った蚊取り線香スタンド、サラダボウルと豆腐の水切りプレートを組み合わせた保温器など、どの道具にもキラリとセンスが光るのは、長年手を動かしてきた経験の賜物、そして「毎日をより心地よく」という石黒さんの一貫した考えがあってこそ。無理をしない姿勢が、結果として節約につながっている。
「私にとって節約とは、お金だけでなく、時間や空間にも通じること。無駄なことをせず、なるべく楽に家事をしたいし、よけいなものを溜め込みたくない。そのためのアイデアを思いついては試しているんです」
何が快適と感じるかは年齢とともに変化するもの。70代に入った石黒さんも、道具をより軽く、小さくするなど、暮らしのアップデートを続けている。
「家の中を見回せば『こうしたほうがもっとよいかも』と気づくことはあるはず。物価が高騰して大変な時期ですが、暮らしを見直すよい機会だと捉えて、できることをしていきたいですね」
庭の落ち葉や花殻を使った美しい腐葉土作り。
空き瓶とクリップを使った蚊取り線香スタンド。
宅配物の紙袋もこんな素敵な道具に変身。
手持ちの道具を使って保温器に。
ストーンウェアのボウルと豆腐の水切り板、ふきんを組み合わせて保温器に。電子レンジで30秒加熱後、パンを温める。
コーヒーはドリップバッグを愛用。
「この方法だとドリッパーもペーパーフィルターも不要」。ドイツ製のビーカーで飲む量を厳密に測ってからお湯を沸かす。
『クロワッサン』1096号より