日本酒のこと、もっと知りたい!唎酒師が教える、好みの味に出会うための基礎知識。
そこで唎酒師の戸田明子さんに、初心者にもよくわかる日本酒のあれこれを教えてもらった。
監修・戸田明子 撮影・青木和義 構成&文・斎藤理子 取材協力・日本酒肉研究所ITTEKI@格之進
Q1.日本酒はどんな時にどう楽しんだらいいですか?
とっつきにくいイメージのある日本酒ですが、実はとても飲みやすく食中酒には最適なお酒です。無数にあるお米や酵母の組み合わせと作り方で、バラエティー豊かな味わいが生まれます。
味の幅が広くどんな好みの人にも合う1本が必ずあります。
日本酒は数あるお酒の中でも一番季節感があるお酒。旬の野菜など季節の食材が手に入った時にはぜひ合わせて楽しんでみてください。夏は、写真のように涼やかな酒器にキリッとした日本酒が合いますね。湯むきして出汁に漬けたトマトをつまみにするのもおすすめです。
おしゃれなラベルの日本酒がたくさんあるのでデザインで選ぶのも楽しいかもしれません。また、和洋中エスニックとどんなお料理にも合うので、ホームパーティーにもおすすめです。
Q2.日本酒の種類とその違い、どんな味わいがあるか教えてください。
日本酒は、米と水と麹だけでできている「純米酒」と、そこに香り立ちや後味のキレを良くするために醸造用アルコール(化学薬品などではなく植物由来の純度の高いエタノール)を少しだけ加えた「醸造用アルコール添加タイプ」があります。
さらに原料のお米の「精米歩合」によって「吟醸」や「大吟醸」に分けられます(下図参照)。
ちなみに精米歩合60%とは、玄米の外側を40%削ったもの。精米歩合が低い(あまり削らない)と味わいが濃く旨みや複雑味のある日本酒になり、精米歩合が高いとクリアで透明感のある味わいになります。
日本酒はお米と水と麹だけでできているのに、使う酵母によってバナナやメロン、リンゴのようなフルーティーな香りがするものがあり、そういったものは特に飲みやすく人気があります。
下図表のように、フルーティーな香りで軽やかなものから、香り立ちは少なくどっしりとして味わい深いトラディショナルな日本酒までいろいろです。
[日本酒の味の区分]
●フルーティー
果物や花のような香りのする、華やかなタイプの日本酒。
●トラディショナル
香りは穏やか。米の香りと旨みをいかした落ち着いた味。
●ライト
サラサラとして軽やか。後味もすっきりしている淡麗タイプ。
●リッチ
アルコール度数が高かったり無濾過原酒など濃いめの味わい。
Q3.初心者はまず何を選んだらいいですか?
日本酒をあまり飲んだことのない方にお薦めしたいのはこの4銘柄です。
(1)仙禽(せんきん) モダンシリーズ
白桃やマスカットを思わせる綺麗な香り、そして口中にじゅわっと広がるジューシーな甘酸っぱさ。日常のお食事にすっと溶け込む酒です。ワイン党にも好評。冷やしてワイングラスで。
(2)産土(うぶすな)
うすにごりで少しシュワシュワ感がある爽やかな酒。みずみずしい梨と桃を搾った果汁のような、優しい甘みと香りです。苦みや日本酒特有の香りがほとんどなく軽快な飲み心地。初めて飲んだ方は皆「こんな日本酒があるなんて!」と驚きます。和食はもちろん、ハーブを使った料理やパスタなどのイタリアンにもよく合います。
(3)みむろ杉
若いマスクメロンのような香りでみずみずしくフレッシュな印象の「みむろ杉 夏純」。夏純に限らず「みむろ杉」ブランドは優しい甘さとバランスの良い酸味が心地よく、いつ飲んでも美味しいです。
(4)信州亀齢(しんしゅうきれい)
香り立ちがとてもよくリンゴや花の香りが感じられます。果実のような甘さがあり、透明感のある味わい。後口は比較的スッキリしているので食事にも合います。「また飲んでみたい」と思うお酒です。
Q4.飲みたいお酒を表現する言葉は?
居酒屋や酒屋で欲しい日本酒を伝える言葉の一例としては「フルーティーで甘い」「やや辛口のおだやかフルーティー」「酸味があって白ワインのよう」「しっかり旨口で深い味わい」「アルコール低めでライト」「すっきりしていて爽やか」「シュワシュワ」といった言葉。合わせる料理を伝えてみるのも手です。日本酒の品揃えが多く“日本酒を冷蔵庫で保管している”酒屋を選ぶのがポイントです。
[おすすめのオンラインショップ]
いまでや https://imadeya.co.jp
伊勢五本店 https://www.isego.shop
SAKE STREET https://store.sakestreet.com
Q5.季節のお酒について教えてください。
季節に合わせて「新酒」「春酒」「夏酒」「ひやおろし(秋上がり)」が造られます。冬から春先に出る「新酒」は、造りたてのフレッシュな美味しさが味わえる酒。
「春酒」はラベルも花やピンク色のものが多く、フルーティーでほんのり甘めの酒でお花見にもぴったりです。
「夏酒」は暑い季節にさっぱり飲めるよう、リンゴ酸やクエン酸の酸味をやや多くしたり、低アルコールでサラサラと飲めるような酒が多いです。
「ひやおろし」は、春先に造りひと夏寝かせることでカドが取れ、円熟した美味しさになった酒のこと。コクがあるものが多く、秋刀魚やきのこに最適。
Q6.日本酒は和食以外にも合いますか?
日本酒は、実はどんなお料理にも合うお酒なんです。国内はもちろん、フランスの星付きレストランでも日本酒をメニューに入れているお店が増えてきました。中華、フレンチ、イタリアン、エスニック、焼き肉やピッツァにも。ぜひいろいろなお料理との相性を楽しんでみてください。
クラフトサケという新しい日本酒登場。
米を原料とし日本酒と同じ並行複発酵という製造方法で作りながら、従来の日本酒では法的に採用できないプロセスを取り入れた酒が「クラフトサケ」。日本酒のルールに縛られない、自由で多様な味わいが楽しめる新しいジャンルの酒として注目され始めています。日本酒を造る過程で、発酵中のタンクの中にフルーツやハーブを入れて一緒に発酵させ、新しい味わいを実現したお酒です。
アヒージョד柔らかな酸”
オリーブオイルを使った料理に。
にんにくとオリーブオイルの香りが食欲をそそるアヒージョに日本酒を合わせると、エビやきのこ、そしてオリーブオイルの旨み成分を一層引き出してとても美味しくなります。相性がいいのは真澄(ますみ) 白妙(SHIRO)。アルコールを12度におさえた、なめらかで心地よい酸と柔らかい甘みの日本酒です。温度変化による味わいのふくらみを楽しむために、ワイングラスで飲むのもお勧めです。
酢豚דフルーティー”
甘酸っぱい中華にも合う日本酒。
土佐市の酒蔵、亀泉酒造の「CEL-24」という日本酒は、なんとパイナップルジュースのような香り立ち。甘みと酸味もジューシーで余韻も華やか。これは、非常に華やかな香りを生む高知県酵母「CEL-24」で醸しているためです。豚肉の旨みや黒酢餡との相性の良さに驚きます。一緒に味わうと、黒酢酢豚には入っていないパイナップルのニュアンスを思わせてくれる日本酒です。
牛ステーキד微発泡”
牛肉に合わせるクラフトサケ。
LIBROM(リブロム) バーベナは、シュワシュワ弾ける爽やかな酒。実はこれ、上記コラムで紹介している「クラフトサケ」です。米と米麹と水で日本酒を造る過程で、ハーブを入れて醸しています。お米の優しい旨みが肉の美味しさをしっかり受け止め、穏やかな酸味と微炭酸でさっぱりとした後口に。ふわっと香るレモンヴァーベナの香りが肉に大変マッチします。ボトルも可愛く気分が上がるお酒です。
『クロワッサン』1097号より
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