シードルを味わう長野の旅、料理家の吉田愛さんが個性あふれる作り手を訪ねました。
県外ではなかなか出合えない銘柄も多く、ならばと料理家の吉田愛さんとシードル巡りの旅へ。
撮影・三東サイ 文・鈴木奈代
りんごの産地、長野県でここ数年注目されているのが、クラフトシードルだ。南北に長い県内では、個性豊かなたくさんのシードルが生産され、日本一の銘柄数を誇る。
そもそもシードルとは、りんごの果汁を発酵醸造したアルコール飲料のこと。日本ではフランス語読みの「シードル」が一般的だが、最近では英語読みの「サイダー」や「ハードサイダー」と呼ばれることも。
発泡性のあるものがほとんどで、アルコール度数は数%と低め。ビタミン、ミネラル、ポリフェノールが豊富で、フルーティで飲みやすいのが特徴だ。県内で採れるりんごは100種類近く。それらを組み合わせ、さまざまな酵母を加えてつくられるシードルは想像以上に表情豊かだ。
「飲み比べると、辛口、甘口、酸味や苦味、渋みの強弱があり、個性が際立っています」と料理家の吉田愛さん。りんご生産者自ら醸造所を構えたり、委託醸造したりと、銘柄も増えている。長野独自のシードルをさらに知るべく、吉田さんと信州へ。
アルプスの山々を眺めながら信州でシードル巡りを。
まずは料理に合わせて、いろいろなシードルを飲み比べてみたいと、飯田市にある人気イタリアンレストラン『MONDO.』を訪れた。
「伊那谷と呼ばれるこのあたりは、寒暖差や昼夜の気温差が大きく、日照率が高いため野菜が美味しいんです」と長野出身のシェフ・澤田省吾さん。
使うのは、野菜はもちろん鮭や豚・鶏肉や卵など、澤田さんが惚れ込む地産の新鮮な食材ばかり。
「地元の食材には地元のお酒が合う」と合わせたシードルも地産だ。
「料理に合わせた4本は、飲んでみるとそれぞれが驚くほど違う。奥深いですね。爽やかだけど旨味は豊かです」と吉田さんも大満足。
シードルと料理のペアリングを堪能し、醸造所見学へ。
醸造所にも土地の魅力が。 それぞれの味わいを知る。
飯田市のシンボル・りんご並木通り沿いにある「りんご並木醸造所 APPO」では、飯田産のりんごのみをミックスし、シードルを醸造している。
次に訪れた松川町の老舗果樹園「フルーツガーデン北沢 マルカメ醸造所」は2019年にシードルづくりをスタート。
園内に醸造所を構え、自ら育てたりんごを使ったオリジナルレシピでシードルを生産するなど、風土と深く結びついた味が魅力だ。
もっと知りたい 信州産シードルをおみやげにして。
長野駅の『信州くらうど』、松本駅そばの『POMGE』など、主要な駅利用なら入手が難しい銘柄も多数揃うショップを見るのも楽しい。
「飲み比べて気に入った銘柄の生産者のことはもっと知りたくなります。醸造所を巡る旅もしたい!」
旅の終わり、駅のショップで気になるシードルを吟味しながらそう語る吉田さん。この夏は、信州でシードルを巡る旅をぜひ。
『クロワッサン』1097号より
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