伊勢志摩さん(以下、伊勢) 宮藤さんは、いつも面白いことを考えているの?
宮藤官九郎さん(以下、宮藤) なんですか藪から棒に! そんなわけないじゃないですか(笑)。
伊勢 今回、「コメディ」や「笑いの力」というテーマで対談、と聞いて、笑いって何だろうと改めて考えてみたんですよ。笑いにもいろいろ種類がある気がして、シニカルな笑いもハートウォーミングな笑いもあるし。あと、とにかく一生懸命何かをしている人を見ると、笑いながら泣けてくるということもあるじゃない?
宮藤 ありますね。
伊勢 『パンクスタイル』という入江雅人さんの一人芝居を観て、脚本・演出だけでなく、舞台上で照明や音響も全部自分で操作をしていて、60歳のおじさんが、汗だくになって一人で走り回っているのを観たら、くだらない内容なのに笑いながら泣けてきちゃった。
宮藤 泣かせようとしているわけではないのに泣けてしまうことはあります。僕は20歳のころに黒澤明監督の『どですかでん』に出会い、30年以上、繰り返し観てるんですけど、『どですかでん』ってコメディではないのに笑えるところがたくさんあって、僕が毎回必ず笑っちゃうところが、全然コミカルな場面じゃないんですよ。
伊勢 えー? どこ?
宮藤 伴淳三郎さん演じる男が、同僚に奥さんのことを悪く言われて、急に怒り出して馬乗りになるところ。
伊勢 泣き笑いね。抑えていた人の感情が決壊するときって泣けるし、その爆発力に笑えますよね。