全編を網羅しているのは、“ナチュラルボーン食いしんぼう”である稲田さんの、食に対する熱い思いと知識。
「甘さ控えめのジャムは、朝の気持ちになんの引っ掛かりも残さない」「ビュッフェは、“何を食べるか”でなく、“何を食べないか”」「辛いものを食べるとき、なんか、生きてる!って感じするよね」などなどの名言が、飛び交う。
「これだけは自分が書かなきゃ、と思うことがあって、その言葉にリアリティを持たせるために、ストーリーを積み上げていきました。エッセイよりも、自然にわかってもらえる気がしました」
主人公は、自分で料理もするし、立ち食い蕎麦も食べるし、気の利いたイタリアンにも行くし、うっかりウーバーイーツを頼んで失敗もする。
「彼女の中では、全部がフラット。食に対する知識があることが偉いわけではなくて、普通のものを普通に食べて楽しむことができるって、本当に大事です。同じものを食べるにしても、順番にこだわるとおいしさが違います。人とごはんを食べながら、ごはん以外の話をするって、もったいないですよ」