寄席の楽屋では「口うるさい師匠がいなくなった」と言われて久しく、確かに私が落語家になった30年前とくらべても、この師匠はすぐに小言になるから気をつけなくちゃいけないなという人は減りました。私は直接お目にかかっていませんが、七代目の橘家圓蔵師匠(月の家圓鏡で売れっ子になったのは八代目)は、「小言じゃあないんだよ」というセリフが小言の始まるきっかけだったとか。
先代(十代目)桂文治師匠もたいへんに厳しいかたでした。楽屋でお小言をいただく度に正直なところ煙たい思いをしていましたが、あるとき小言の種を見つけた途端「あった!」という感じで一瞬、嬉しそうな顔になり、それから苦虫を噛みつぶしたようなコワモテで小言…。以来、小言を言う文治師匠をなんだか可愛いって思うようになってしまいました。いや、もちろん真面目に聞いてましたけどね。
おやおや、今回は「おい、噺について書いてねえぞ!」って、小言をいただきそうです。