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年々盛り上がるクラフト蒸留酒。2人のプロが語る人気の背景。

年々盛り上がりを見せるクラフト蒸留酒。
気鋭のバーテンダーとスピリッツ専門家、2人のプロが語る、人気の背景とは?

撮影・兼下昌典 文・藤森陽子

ここ数年、家飲みアイテムとしても人気が高まるクラフト蒸留酒。全国数千のバーやレストランの顧客を持つ名酒店『武蔵屋』の小林卓也さんが、バーテンダー・大場健志さんの店『bar cacoi』へ。昨今のクラフト蒸留酒に一家言を持つ2人が、最新事情や新たな楽しみ方について語ります。

「日本らしさや地域性を追求する小規模蒸留所に惹かれます。」(大場さん)/「蒸留酒は成功者のステイタスから、より身近なライフスタイルの一部に。」(小林さん)
「日本らしさや地域性を追求する小規模蒸留所に惹かれます。」(大場さん)/「蒸留酒は成功者のステイタスから、より身近なライフスタイルの一部に。」(小林さん)

小林卓也さん(以下、小林) 久々にお店に来られてうれしいです。やはり素敵な場所ですね。

大場健志さん(以下、大場) ありがとうございます。今日は小林さんとクラフト蒸留酒のお話がしたくて。

小林 ええ。ここ数年でとても扱う店が増えました。伝統的なバーよりも、新鮮なフルーツやハーブ、スパイスを使った“ミクソロジーカクテル”などの新感覚のカクテルを出す、次世代的バーでの扱いが増えていると感じます。

大場 僕のお店でもクラフトジンに関心を持つ若いお客様が増えてきました。造り手も増加していて、確か日本でジンの蒸留所がないのはたった4県ほど。今やほぼ日本全国で、その土地のボタニカル(ハーブや果物などの自然素材)を使ったお酒が造られています。
蒸留酒はベーススピリッツ(元となるアルコール)にボタニカルを漬けて香りを引き出すお酒なので、多彩な素材を使えて自由度が高いのが特徴です。それぞれの造り手が地域性を打ち出しているのが面白い傾向だと思います。

『bar cacoi』の棚には、大手メーカーのスピリッツのほかマイクロ蒸留所のジンや焼酎も並ぶ。
『bar cacoi』の棚には、大手メーカーのスピリッツのほかマイクロ蒸留所のジンや焼酎も並ぶ。

小林 そうですね。お店もジントニックやジンソーダだけを出すような、ジンに特化した専門店も出てきていますし。

大場 僕がバーテンダーになった2000年代初頭は、店にジンを10本置いていれば多いと言われていましたが、当時に比べてバリエーションが広がり、掛け算の分母が増えている印象です。

小林 クラフト蒸留酒は地域性や歴史、文化の集大成なので、そうした背景がより評価されるようになってきた気がします。お酒って、人間が蓄積してきた叡智と自然の恵みの結晶ですから。

大場 小規模生産で、ラベルのデザインもとてもオシャレ。クラフトという言葉の印象もありますが、かつての工業製品的なイメージから、より農作物のような自然に近い感覚なのかも。

小林 ええ。昔はジンやブランデー、ラムなどの蒸留酒は、“成功者がステイタスのために飲むお酒”といったイメージが強かったじゃないですか。

大場 ガウンを着て猫を抱いてブランデーグラスを揺らしているような……。

小林 そうそう(笑)。でも今のクラフト蒸留酒は、自分の価値観を表す一要素というか、ライフスタイルに合うものを選んでいますよね。
海が好き、山が好きとか、そうした自分の嗜好に合わせてお酒をチョイスしたり、あるいは薬草園の敷地内に蒸留所を造った『mitosaya』の江口宏志さんのような、蒸留家のライフスタイルに共感して購入する方もいる。
ラグジュアリーさや高級感を楽しむ方向から、造り手の価値観や世界観を“シェア”する感覚が、今の時代とも繋がりますよね。

焼酎や泡盛をベースにした日本のクラフトジンが面白い!

大場 クラシックなジンはベースに無味無臭の中性スピリッツを使うのが一般的ですが、日本では焼酎や泡盛を用いたものが増えているので、ベースに着目して選ぶのも楽しいと思います。小林さんおすすめの蒸留酒はまさに、バーテンダーにとって王道のベスト3ですね。

【小林さんセレクト】左から、「Japanese GIN 和美人」(本坊酒造)、「奥飛騨ウォッカ」(奥飛騨酒造)、「イエラボ カラキ」(伊江島蒸留所)。
【小林さんセレクト】左から、「Japanese GIN 和美人」(本坊酒造)、「奥飛騨ウォッカ」(奥飛騨酒造)、「イエラボ カラキ」(伊江島蒸留所)。

小林 うれしいです(笑)。「和美人」は蒸留所のある鹿児島で穫れた金柑や柚子、月桃など9種の地元産ボタニカルを使っていて、最後に緑茶が香ります。今年ロンドンで開催されたスピリッツの競技会で、日本初となるジン部門の最高賞を受賞したんですよ。
「奥飛騨ウォッカ」は日本酒の蔵元が造る、世界でも珍しいお米を原料にしたウォッカ。米焼酎のようなほのかな甘みがあり、僕はキンキンに冷やして飲む派です。
最後は沖縄『伊江島(いえじま)蒸留所』の「イエラム」からリリースされた「イエラボ」。東京・吉祥寺の伝説のラムバー『SCREWDRIVER(スクリュードライバー)』の海老沢忍さんとコラボしたシリーズで、伊江島産黒糖を原料に、カラキという沖縄シナモンを加えたスパイスドラム(一般的にはスパイスを浸漬(しんせき)して造るラムのこと)。通常甘みをつけるのですが、これは加糖せず、黒糖由来のコクとスパイスそのものの香りを楽しむのが新鮮です。

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