くらし

ビートルズ『Her Majesty』、エリザベス女王に向けられたポールの憧憬とジョンの反骨【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】

  • 文・高橋芳朗

エリザベス女王に向けられた ポールの憧憬とジョンの反骨。

お題:ビートルズ『Her Majesty』

イギリスのエリザベス女王が9月8日、滞在先であるスコットランドのバルモラル城で死去しました。96歳でした。

エリザベス女王と所縁のある音楽家として真っ先に思い浮かぶのは、やはりビートルズでしょう。
彼女は1997年の自身の金婚式で「この50年は世界にとって驚くべき50年でしたが、もしビートルズがいなかったら私たちはどんなに退屈していたでしょう」と彼らを讃えています。

当のビートルズは1969年、「女王陛下は素敵な女性」と歌う「Her Majesty」を録音しています。
この曲の作者であるポール・マッカートニーは小学生のころに女王を題材にした作文で賞を受賞していますが、実際、彼は10代のころ彼女に憧れていたことをドキュメンタリー映画『エリザベス 女王陛下の微笑み』の中で打ち明けています。

同じビートルズでも、ジョン・レノンの女王に対する態度はポールと対照的です。

彼はポールが「Her Majesty」を歌った1969年、ビートルズの一員として1965年に女王から授与されたMBE勲章を彼女宛に返還。それは、当時イギリスがナイジェリアとビアフラの紛争に介入したことへの彼なりの抗議の表明でした。
ビートルズ時代に王室主催の演奏会で「安い席の方は手拍子を。それ以外の方は宝石をじゃらじゃら鳴らしてください」と言ってのけたジョンの反骨心は、相手が女王であろうと不変だったのです。

「Her Majesty」のほか「Come Together」「So mething」「Here Com es the Sun」など名曲 揃いのビートルズのアルバム『Abbey Road』。

高橋芳朗 さん (たかはし・よしあき)

音楽ジャーナリスト

著書に『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』(スモール出版)など。

『クロワッサン』1080号より

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