取り出しやすく、しまいやすい。理想の台所に辿り着くには?
撮影・山本 嵩
引っ越しを機に、キッチンを見直したかせや久美さんと阿古真理さん。収納棚はスペースに合わせてカスタマイズ、コンロ下のスペースを活用、よく使うものはコンロの近くに等々。その工夫ポイントを、かせやさんの自宅で、じっくり語り合ってもらった。
かせや久美さん(以下、かせや) 私が引っ越しを決意したのは、2011年の大震災がきっかけでした。
当時、住んでいたのは千葉の松戸。市ケ谷の出版社に勤めていたんですが、歩いては帰れず。本当に怖かったです。それで職住近接を目指して、市ケ谷を中心に必死に物件を探しました。
阿古真理さん(以下、阿古) 家探し、大変ですよね。
かせや なかなかなかったんですが、翌年の2月末にたまたまここの案内を見つけて、すぐ見に来て、即決でした。キッチンがオープンだったのがよかったですね。前の家も同じスタイルで、この気持ちよさはわかっていたので。
阿古 キッチン、大事ですよね。うちの引っ越しは、本が多くなりすぎて、もっと広いところに住みたかったのがきっかけですが、キッチンの問題も大きかった。
何しろ、狭いし、寒い。隣のマンションが接近してて、日がささないんです。奥まっていたので、エアコンの風も届かないし。
私は冷え性もあったので、凍えそうになりながら、冬はもう、できるだけ台所に立つ時間を短くするみたいな感じでしたね。
かせや 狭いというのはどのくらい?
阿古 後ろに30数センチの棚を置くだけで、人が入れるスペースが70センチしかない。だから、夫が入ってくるときは、必ず声を掛けて前に詰めて、みたいな感じで。うちは夫も同じように料理するので、不便でしたね。
絶対譲れないポイントを明確にしてから家探し。
かせや 私は逆に、以前の家のキッチンが理想だったので、それを手放すのはつらかったですよ。夫が一級建築士なので、全部自分たちで設計して作った台所だったんです。今は幅180センチの超コンパクトなシステムキッチン。収納ぎりぎりです。
阿古 それは確かに、決心がいりますね。うちの場合は、マイナス面を少しでもなんとかしたいというところから始まったので、チェックポイントがはっきりしていたのはよかったのですが、その代わり妥協ができない。10カ所19件くらい見て回りました。
かせや 絶対譲れない条件というのはなんでしたか。
阿古 調理台の高さでしょうか。何軒か越したんですが、全部高さが80センチで。私が162センチ、夫が172センチなので、二人とも腰がつらい。85センチはほしい。前のところは、オーナー物件で大家さんが小柄だったせいか、ここも80センチだったんです。
かせや うちは私が153センチ、夫が180センチなのでうまく合わないんですが、低いのはつらいですよね。
阿古 あとは3口コンロですね。ずっと2口だったのでなんとしても。
2口で充分という話も聞きますが、使ってみないことにはわからないので、これは自分の仕事上も外せなかったですね。
それと調理するスペースももっとほしかった。お菓子作りが好きなんですが、そのたびに、水切りカゴを棚の上に移動したり、材料をコンロの上にまで置いたり、大変だったので。
かせや ここのいいところは、調理台の前が、すかーんと空いているところ。だから、調理するときはカウンターの上にいろいろ置けるんです。そのために、普段から余分なものは置かないで、空けるようにしています。
阿古 このスペースはいいですね。
かせや あと、調理しながら外の緑が見えるのが気に入っています。大きなイチョウの木があって、季節の色の変化がきれいなんです。この雰囲気は、前の家と同じだったので、決め手になりましたね。
【阿古】2カ所の出入り口が便利。動線がスムーズに。
【かせや】こだわりのオープンキッチン。
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