「その時」にあわてないために、介護をシミュレーションする。
文・ 殿井悠子 イラスト・古谷充子
あらかじめイメージしておけば 変化を受け入れ、行動できます。
ある日突然、介護が始まるわけではなく、たいていは親になんらかの予兆があるもの。小さな変化が徐々に大きくなって、久しぶりに親に会ったときに「突然、どうしちゃったの!?」と感じるのだ。
わずかな変化を見つけるには、日ごろから定期的に連絡をとり、親に変わったことがないか、話をよく聞き、観察することが大事。準備や心構えがあれば「あ、ついに来たかも」と慌てなくてすむ。
1.親が75歳以上になった
どんな人でも必ず年を重ね、身体は老化していく。今は元気でも、親の年齢が高くなったらサポートが必要だと考えよう。健康状態や生活環境にもよるが、75〜80歳くらいになったら、ケアや支援が必要と考え、今後について親と話してみよう。
2.コミュニケーションに変化を感じる
野球好きな親に「昨日の大リーグ、大谷、すごかったね」と声をかけても「誰、それ?」という反応なら、野球や大谷選手を忘れてしまったのかも。「今日の昼ご飯は何を食べたの?」「最近、お出かけした?」など直近の話題に、どれだけ反応するかをチェック。話をごまかす、早く終わらせようとするのは、触れられたくない可能性が。「なんだか普段と違う」と違和感があれば要注意。
3.ケガや病気で病院にかかった
段差で足をひねった、家の中で転んで膝や腰を打った。そうした小さなケガのうちに対策をすることが、大きな事故の予防になる。介護が必要になるケースで多いのは、玄関や外出先で転んで大腿骨頸部を骨折、入院し、そのまま寝たきりになるもの。「今回は捻挫ですんでラッキーだった」と捉えて、手すりをつける、滑りにくい靴下を履くなど、現実的な対処をする機会にしよう。
「いつか」は「必ず来る」と 受け止めましょう。
予期しないことが起こると人は慌て、焦り、失敗するもの。介護にも同じことが言える。老いは自然なことで、ある程度予測できる。「もしこうなったらこんな選択がある」と、あらかじめシミュレーションしておくことで、いざというときもすばやく対応できる。
(まず相談)地域包括支援センターとは?
地域包括支援センターは、高齢者の保健福祉の相談や支援を受ける際の総合窓口。住み慣れた地域で安心して暮らせるように、保健福祉や介護の専門家が相談に対応する。必要に応じて、介護や医療機関、市町村などと連携し、高齢者支援サービスを受けられるように手続きをする。市町村によって内容が異なるので、詳しく知りたい際は、親の住む地域のセンターを検索して相談を。「地域ケアプラザ」(横浜市)「高齢サポート」(京都市)など、親しみやすい名称にしている自治体もある。
介護はこうして始まっていく!? 想定パターンをイメージしておきましょう
介護が始まるパターンと、その先に起こりがちなことを知っておこう。
介護保険サービスを利用する際のおおまかな流れでもある。
●突然入院した!
急な病気やケガの入院先が急性期の病院だと、医療的措置が終わると退院が必要。
●なんとなく言動がおかしい
つじつまが合わない、約束を忘れるなど、「今までと様子が違う」と思ったら相談を。
●75歳以上だが、今は元気
日ごろから親に連絡し、変化がないか気に留める。家の片づけに行き、様子をみても。
【地域包括支援センター】
まず相談するのが、ここ。地域での支援や介護保険サービスについて教えてくれる。介護が必要な人(親)が住む地域のセンターに相談する。
【リハビリ専門病院】
病気などで障害を負った場合に、看護や医学的な管理をしながら、自宅復帰を目指してリハビリをする。入院期間は最長でも3カ月。
【介護老人保健施設】
医療やリハビリが必要な要介護者が対象。病院と自宅の中間的な役割で、在宅復帰を前提としたリハビリを実施。入所期間3〜5カ月。
【ケア付きなど 自宅以外の住まい】
本人の希望や身体機能の低下、認知症が進んだ、在宅介護が困難になった場合などに、施設の入所やホームへの入居を考えることも。さまざまなタイプの施設やホームがある。
【介護保険を利用して自宅で暮らす】住み慣れた自宅で暮らし、必要に応じて訪問・通所・短期入所サービスなどの介護保険サービスを受けることが可能。要支援・要介護と認定されれば費用の自己負担の基本は1割〜3割。
申請から認定結果が確定されるまでの流れ
要介護認定の申請
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認定調査/主治医意見書
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一次判定(コンピュータによる分析)
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一次判定の結果と認定調査票の特記事項と主治医意見書の整合性を確認
↓
二次判定(介護認定審査会)
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【要介護状態区分の決定】
介護保険サービスを利用するには、まず、被保険者(親)の住所地の自治体へ要介護認定を申請する。窓口は地域包括支援センターの場合が多い。自治体のホームページには申請書類のダウンロードや記入方法の説明があることが多く、自治体独自のサービスを設けている場合も。
『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)より。
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