確定申告で節約できる税金や、年金のお役立ち情報。
イラストレーション・市村 穣 構成と文・黒澤 彩
税金を節約する!
自分で申告しなければ節約できるものもできないのが税金。年末調整で忘れてしまっても、確定申告すれば戻ってくるのであきらめないで。知って行動するだけで得になる制度を、注意すべきポイントも含めて解説します。
\節約/1 確定申告できる、見落としがちな控除3パターン。
【市販薬を買ったら セルフメディケーション税制。】
「確定申告で受けられる控除といえば、住宅ローン控除、医療費控除あたりがよく知られていますよね。でも、それ以外にも見落としやすいけれどお得な控除があるんです」と教えてくれたのは、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。
セルフメディケーション税制もその一つで、対象の市販薬を家族で年間1万2000円以上購入した場合に申告できる。医療費控除との併用はできない。
「1万2000円を超えた分の金額が8万8000円を上限として控除されます。医療費が10万円に届かなかったとしても、市販薬代が数万円かかったという家庭はけっこうあるのではないでしょうか」
市販薬といっても何でもいいわけではなく、特定の成分を含むOTC医薬品が対象。パッケージに「税控除対象」のマークがついているものも多い。今年から対象となる医薬品目が増え、より控除を受けやすくなるので、レシートは必ず保存しておこう。
【親に仕送りをしているなら 扶養控除に。】
高齢の親を援助しているなら、扶養に入れて扶養控除を受けることができる。
「要件は2つ。まずは生計を一にしていること。別居していても、定期的な仕送りなどで経済的にサポートしていれば同一生計とみなされます。もう一つは親の収入が一定額を超えていないこと。例えば、年金のみで暮らす65歳以上の親なら、年金収入が158万円以下の場合に扶養に入れることができます」
血縁の有無は問わないので、配偶者の親などでも前述の要件を満たせばOK。
気になる控除額は、親の年齢と同居か別居かによって変わる。親が65〜69歳だと同居か別居かにかかわらず38万円。70歳以上は同居58万円、別居48万円。控除できると節税になる。
「こうした人的控除はほかの控除と違い、お金を使わなくても受けられるもの。申告するだけでいいのです」
【子どもの国民年金を払うと社会保険料控除に。】
20歳になると誰もが加入する国民年金保険。子どもが学生のうちは本人に代わって保険料を支払うと、親の社会保険料控除として申告できる。
「令和3年度の保険料は月1万6610円。学生には大きな負担です。学生納付特例で申請すると在学中の保険料納付が免除されるのですが、10年以内に追納しなければ、子どもが将来受け取れる年金が減ってしまいます。もし親に余裕があるなら、在学中の保険料は払ってあげて、その分、親が税金で得をするのも一案です」
子どもの保険料1年分を払ったとすると、年収800万円なら約6万円の節税に。すでに学生納付特例の手続きをしたケースでも、追納分を代わりに支払えばその分の控除が受けられる(子どもと生計を一にしていることなどが条件)。なお、節税効果は所得が高いほど大きくなるので、共働きの家庭は収入の高いほうが控除を使おう。
\節約/2 医療費控除の落とし穴を知らないと損する!?
医療費の負担が10万円を超えると税金が戻ってくる医療費控除は、確定申告する項目のなかでも身近なもの。
「ですが、申告する上でとても大事なルールが意外と知られていません。間違えたまま申告すると、戻ってくる金額が大幅に減ってしまうことも」
上の計算式を見てみよう。支払った医療費から民間保険の給付金などで補てんされた分を差し引き、そこから10万円を引いた金額が控除額になる。ここで気をつけたいのは、[補てんされる金額]が、給付された額全部とはかぎらないという点。
ある夫婦の医療費の合計が60万円だったとする。内訳は、夫の歯科治療50万円(保険の給付はなし)と、妻の入院手術代10万円(民間保険から30万円の給付あり)。さて、申告できる控除額は?
「答えは、家族の医療費合計60万−保険等で補てんされる額10万−10万=40万円です」
補てんされる額は30万円では?と思う人が多いだろう。
「そこが落とし穴なんです。[補てんされる金額]の上限は、支払った医療費。妻の入院手術で支払ったのは10万円なので、保険からどれだけ給付されたとしても、今回の[補てんされる金額]は10万円になるわけです。間違えて30万として計算すると、控除額は20万円になってしまいます」
このケースでは、記入(入力)ミスによって、なんと6万円も節税し損ねることになるそう。申告する際のルールを頭に入れておきたい。
●医療費控除額の計算方法
\節約/3 ふるさと納税で楽しく節税。上半期の注意点は?
今年から、ふるさと納税の確定申告手続きが簡素化される。
「住宅ローン控除、医療費控除などを受ける人、6カ所以上の自治体に寄附をした人は、ワンストップ特例を利用せず確定申告をします。これまでは寄附ごとに証明書が必要でしたが、令和3年分から同じポータルサイトであれば1枚で済むようになったので、確定申告もそれほど面倒ではありません」
おさらいすると、ふるさと納税は寄附金の上限内で自治体に寄附をすると2000円を差し引いた金額が住民税から控除される制度。年間の上限額は、年収と家族構成によって異なる。
「一年中寄附をできますが、まだ年収が見通せないうちから申し込むと、上限を超えてしまう恐れも。気をつけましょう」
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