くらし

一日一茶に落款、中村孝則さんの運を開く「暮らしの習慣」。

運のいい中村孝則さんが、日々あたりまえのようにくり返す「習慣」とは?
  • 撮影・三東サイ 文・田村幸子

人とのつながりが運を開く。そのきっかけとなった落款。

コラムニストでフーディストの中村孝則さんは、コロナ禍をきっかけに生活を夜から朝型にシフトした。

「早朝、近所の代々木公園を早歩きで一周して、明治神宮を参拝することも。仕事を終えた夕刻は金王八幡宮にある道場など、週3回は剣道の稽古に向かいます」

どんなに忙しくても、一日の区切りにお茶を自点てする。「壽福庵」当主で茶人の中村さんにとって、お点前はあたりまえのように暮らしに溶けこむ。

15年ほど前から、香港の印鑑専門店で石を選んで落款(らっかん)を誂えてきた。落款を押すのが楽しくて、手紙を書くように。お礼状や季節のあいさつなど、手紙をしたためるうちに人との出会いにつながり、運が開けるきっかけになったという。

「旅先でも一日一茶を心がけて、茶道具を携帯します。クルージングで北欧を旅したとき、現地の人たちを招いてお茶を点てたら、感激されました」

「香港で誂えた 落款。今では3つになりました。」

香港の老舗ホテル、ザ・ペニンシュラの地下アーケードにある印鑑専門店『Tangs(タンズ)』には、世界の著名人が印鑑や落款を作りにくる。

中村さんがオーダーしたのが左の落款。茶人名「崇仙」と彫った八角形、「孝則」の瓢箪形、茶室の庵号「壽福庵」の3つ。日本の印鑑よりぐっとファッショナブルでタイポグラフィのような趣が。

「お茶会には、福郎の掛け軸で客人をもてなす。」

「東の魯山人、西の半泥子」と称される芸術家、川喜田半泥子の掛け軸。季刊誌に巻頭エッセイを寄稿している、志摩観光ホテルの茶室「愚庵」にゆかりがある。茶会を開くにあたり手に入れた。

「ふくろうを福郎と記し、遊び心ある筆画に心を奪われました。安価で譲り受けたのもご縁。うちのお茶会でもよく掛けます」

「旅先にも、 茶道具は必ず 持っていきます。」

オーダーメイドのルイ・ヴィトンの茶箱には、小ぶりの茶道具が仕覆に包まれ収まっている。山吹色のレザーとパープル色の絹の内布。

茶人の中村さんは、どこを旅してもお茶を点てて嗜む。時には、旅先で「一期一会」の小さな茶会を開くことも。「師匠にきびしく指導されましたが、今はお茶をふるまうのが楽しい」という。

「修験者の法螺貝、 吹くと気持ちが いいですよ。」

大分県国東市を舞台に、食のイベントを開催したときのこと。
「オープニングの合図に修験者のように法螺貝(ほらがい)を奏でたら、とイメージが浮かび、大阪の貝専門店で作りました」。
朝の散歩の途中、人けのない公園で練習した。「吹くと、とても気持ちがよくて。何事?って、びっくりされることもあるけれど(笑)」

中村孝則

中村孝則 さん (なかむら・たかのり)

コラムニスト

神奈川・葉山町生まれ。ファッションから旅まで寄稿。「世界ベストレストラン50」の日本評議委員長、大日本茶道学会茶道教授。剣道教士七段。

『クロワッサン』1060号より

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