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近田春夫さんに聞いた、海外でも愛される日本の音楽とは?

歌は世につれ世は歌につれ。近田春夫さんが考えるいつまでも歌われる音楽、海外でも愛される日本の音楽とは?

文・神舘和典

Q1.音楽を聴く環境がCDから配信の時代に移行していますが、 どの配信サービスを選べばいいでしょうか?

近田さんオススメの星野源「ドラえもん」。『映画ドラえもん のび太の宝島』の主題歌。
近田さんオススメの星野源「ドラえもん」。『映画ドラえもん のび太の宝島』の主題歌。

Apple MusicやSpotify(スポティファイ)など、今は音楽配信サービスが豊富にある。

「アルバム単位ではなく、聴きたい曲を〝1曲買い〟できる、便利な時代になりました」

近田春夫さん自身はどの配信コンテンツを利用しているのだろう。

「実はYouTubeしか使っていません。無料でかなりの音楽が聴けて満足しています。まずYouTubeを目いっぱい活用してみては」

YouTubeには、権利関係がクリアされた新曲のオフィシャル映像や音源も数多くアップされている。

「YouTubeで新曲が聴ける流れは加速していくでしょう。今のスマホはスピーカーのクオリティが高いので、就寝前に一人ベッドでも楽しめます。1曲聴くと関連するおすすめ曲が表示されるので、時間を忘れて聴いてしまいます」

Q2.新しいアーティストが次々と生まれていますが、 大人が楽しめる若手ミュージシャンや曲を教えてください。

スキマスイッチの名バラード「奏(かなで)」はJUJU、島谷ひとみなどがカバー。
スキマスイッチの名バラード「奏(かなで)」はJUJU、島谷ひとみなどがカバー。
ジェニーハイの最新アルバム『ジェニースター』。「夏嵐」「シャンディー」は疾走感があり、でも切ない。
ジェニーハイの最新アルバム『ジェニースター』。「夏嵐」「シャンディー」は疾走感があり、でも切ない。
スキマスイッチの名バラード「奏(かなで)」はJUJU、島谷ひとみなどがカバー。
ジェニーハイの最新アルバム『ジェニースター』。「夏嵐」「シャンディー」は疾走感があり、でも切ない。

「若い世代に人気があるOfficial髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)、KingGnu(キングヌー)、米津玄師(よねづけんし)などは、質が高く歌もうまいので、聴き込めば聴き込むほど魅力を感じます。ただし、彼らの音楽の構造を理解するには時間とエネルギーが必要かもしれませんね」

今の音楽は情報量が多く、緻密にできているからだ。

「まず音楽は、BGMとして気持ちいい、あるいは聴きながら一緒に歌えることが大切でしょう」

日本のポップミュージックの多くは、カラオケとリンクしてヒットしてきたことが特徴的だという。

「そういった意味でおすすめは、星野源。そして、川谷絵音(かわたにえのん)がお笑い芸人の小籔千豊(こやぶかずとよ)やくっきー!とやっているバンド、ジェニーハイ。米津玄師ならば『感電』あたり。聴きながら一緒に歌えるからです。また、秦基博(はたもとひろ)やスキマスイッチなど、オフィスオーガスタに所属するアーティストの曲も歌えます」

Q3.1970〜’80年代の日本のシティポップが海外で人気ですが、 なぜ外国人に聴かれるようになったのでしょう。

松原みきは2004年に他界。「真夜中のドア〜Stay With Me」はベスト盤で聴ける。
松原みきは2004年に他界。「真夜中のドア〜Stay With Me」はベスト盤で聴ける。
竹内まりやの「プラスティック・ラブ」収録の『VARIETY』。11月にシングルが再発売。
竹内まりやの「プラスティック・ラブ」収録の『VARIETY』。11月にシングルが再発売。
松原みきは2004年に他界。「真夜中のドア〜Stay With Me」はベスト盤で聴ける。
竹内まりやの「プラスティック・ラブ」収録の『VARIETY』。11月にシングルが再発売。

1979年の松原みきのヒット曲「真夜中のドア〜Stay With Me」がSpotifyで2300万回以上、’84年の竹内まりや「プラスティック・ラブ」がYouTubeで2400万回以上再生されるなど、いわゆる〝ジャパニーズ・シティポップ〟が世界的に聴かれている。

「主にヨーロッパのジャパニーズ・ポップマニアのDJによって人気が再熱しました。’80年代の日本のシティポップにはダンサブルな曲が多く、リズムがはっきりしています。曲をつなげやすくて、DJが扱いやすいんですよ」

日本が経済的に豊かだった時代の音楽なので、おしゃれな雰囲気が感じられることも人気の理由だ。

Q4.どんな曲がスタンダードになるのでしょう? 50年後も聴かれていそうな曲を教えてください。

「いとしのエリー」を収録しているサザンのアルバム『10ナンバーズ・からっと』。
「いとしのエリー」を収録しているサザンのアルバム『10ナンバーズ・からっと』。
「DESTINY」を収録しているユーミンの名アルバム『悲しいほどお天気』。
「DESTINY」を収録しているユーミンの名アルバム『悲しいほどお天気』。
山下達郎「クリスマス・イブ」は、35年連続、12月にオリコン週間TOP100入りしている。
山下達郎「クリスマス・イブ」は、35年連続、12月にオリコン週間TOP100入りしている。
「決戦は金曜日」収録の『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』。
「決戦は金曜日」収録の『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』。
宇多田ヒカルの「traveling」。元夫・紀里谷和明による色鮮やかなMVも話題になった。
宇多田ヒカルの「traveling」。元夫・紀里谷和明による色鮮やかなMVも話題になった。
モーニング娘。の初ミリオン曲で最大のヒット曲「LOVEマシーン」。
モーニング娘。の初ミリオン曲で最大のヒット曲「LOVEマシーン」。
累計150万枚以上売れたAKB48の大ヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」。
累計150万枚以上売れたAKB48の大ヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」。
6人時代のSMAPの「がんばりましょう」は、プリンスの曲をサンプリング。
6人時代のSMAPの「がんばりましょう」は、プリンスの曲をサンプリング。
「いとしのエリー」を収録しているサザンのアルバム『10ナンバーズ・からっと』。
「DESTINY」を収録しているユーミンの名アルバム『悲しいほどお天気』。
山下達郎「クリスマス・イブ」は、35年連続、12月にオリコン週間TOP100入りしている。
「決戦は金曜日」収録の『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』。
宇多田ヒカルの「traveling」。元夫・紀里谷和明による色鮮やかなMVも話題になった。
モーニング娘。の初ミリオン曲で最大のヒット曲「LOVEマシーン」。
累計150万枚以上売れたAKB48の大ヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」。
6人時代のSMAPの「がんばりましょう」は、プリンスの曲をサンプリング。

まず、サザンオールスターズ、松任谷由実、山下達郎の曲。

「サザンの『いとしのエリー』は、デビュー以来コミカルなイメージがあった彼らの最初のバラードナンバー。本気度が感じられます。ユーミンは、生き方も含めてリスナーに強く支持されてきました。個人的には歌詞に負けん気の強さを感じる『DESTINY』が好きです。山下達郎の『クリスマス・イブ』はハッピーではないクリスマスの哀しさがリアルに響きます」

ユーミンの媚びない強い女性のイメージはDREAMS COME TRUE、安室奈美恵、宇多田ヒカル、浜崎あゆみなどに継承された。

「ドリカムの『決戦は金曜日』、宇多田の『Can You Keep A Secret?』『traveling』も強さを感じます」

景気のいいメロディや歌詞の音楽も残っていくと近田さんは言う。

「モーニング娘。の『LOVEマシーン』、AKB48の『恋するフォーチュンクッキー』、SMAPの『がんばりましょう』など。ファンじゃなくても歌えるでしょ?」

Q5.K‐POPは世界中のリスナーに聴かれていますが、 J‐POPで世界的にヒットしそうな音楽はありますか。

三代目 J SOUL BROTH ERS from EXILE TRIBEの代表曲「R.Y.U.S.E.I.」。
三代目 J SOUL BROTH ERS from EXILE TRIBEの代表曲「R.Y.U.S.E.I.」。

ジャニー喜多川さん、メリー藤島さんが他界したジャニーズ事務所に、企業としても、音楽も、新しくなる気配が感じられるという。

「その象徴がSnowMan(スノーマン)とSixTONES(ストーンズ)。ジャニーズのアーティストの曲には、どこかコミカルなイメージもありました。でもここ数年は音楽の本質で、真っ向勝負しようという志を感じます。副社長のタッキー(滝沢秀明)の意思かもしれません。たとえばSnowManの『D.D.』には、世界マーケットへの意識が聴き取れます」

背景にはK-POPの世界的な成功や、EXILE系の事務所、LDHの存在があると言う。LDHはすでに海外にいくつもの拠点を置き、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのメンバーなどは積極的に海外進出している。

「ジャニーズ事務所やLDHは、これからさらに楽しみ。国も後押しするべきだと僕は思いますよ」

  • 近田春夫

    近田春夫 さん (ちかだ・はるお)

    ミュージシャン

    1951年、東京生まれ。代表曲に「星くず兄弟の伝説」「きりきりまい」など。近著に『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』(文春新書)がある。

『クロワッサン』1054号より

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