川本直子さん(以下、川本) 給与明細を見ると「なぜこんなに年金保険料を払わなきゃいけないのか」と思います。
山中伸枝さん(以下、山中) そもそも年金は、「貯金」ではなくて「保険」なんです。火災保険に入っていて、火事になり保険金を受け取ってトクをしたと思いますか? 困った事態になったから保険金を受け取るわけで、それでトクしたとは思わない方が多いでしょう。年をとって働けなくなったから、受け取るものが年金なんです。
川本 漠然とですが、「将来、年金はもらえないんじゃないか」というイメージもありますが。
山中 国民年金の人でも、65歳から10年間、公的年金を受け取れば、実際払った保険料よりも多い額を受け取れます。厚生年金の人は、それよりも早くモトがとれる計算になります。75歳を超えると払った分以上に受け取れるのですから、払っておいたほうがいいと思います。
老齢年金以外にも、遺族年金や障害年金という形でも保障があります。無責任な人が声高に「年金なんてもらえない」と言いますが、公的年金は本当によくできている制度で、私たちの老後を支えてくれます。民間で同様の金融商品はありません。
川本 これも心配なのですが、老後に2000万円は必要なのですか?
山中 年金の目的は、「防貧」です。老後に極端に貧しくならないための最低保障になります。だから、毎月温泉に行くお金まで出せるわけではありません。老後にいくら必要かは、一人ひとり違います。まずは、自分が受け取れる年金額を知って、不足する分を自分の価値観で準備するのが合理的です。
川本 年金は、65歳からすぐに受け取るのがいいのでしょうか?
山中 60~70歳までの間で、いつから受け取り始めるのか選べます。早くから受け取り始めれば月額が下がり、遅くから受け取り始めれば月額が増えるしくみです。受け取りたい時期は、家計の状況によって変わりますよね。
川本 世の中の流れから、老後に向けて投資をしたほうがいいでしょうか?
山中 投資をしなければならない理由は、自分が楽しく生きるためにお金が必要だからです。お金がないと仕事を休むこともできず、自由な老後の生き方を選択できませんからね。