暮らしに役立つ、知恵がある。

 

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『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

日本各地で名もなき職人につくられ、文化人にも愛されてきた日用品が民藝。
暮らしに取り入れやすい民藝うつわの魅力と使い方のコツを『工芸喜頓』の石原文子さんに聞きました。

撮影・深水敬介 イラストレーション・村松佑樹 文・輪湖雅江

全国民藝うつわマップ

日本各地に数多ある民藝うつわを産地別にご紹介。地域を象徴する焼き物と代表的な窯元を石原さんに教えてもらった。

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

【東北】岩手、山形、福島

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|福島|会津本郷焼(あいずほんごうやき)|

岩手の小久慈焼(こくじやき)や山形最古の磁器・平清水焼(ひらしみずやき)など、歴史ある焼き物が多い東北。桃山時代に城郭の瓦づくりから始まった福島の会津本郷焼も有名。柳宗悦が絶賛した箱型の陶器“ニシン鉢”(イラスト)は、会津の郷土料理、ニシンの山椒漬けをつくるために考案された。

【北関東】栃木、茨城

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|栃木|益子焼(ましこやき)|

茨城の笠間焼(かさまやき)とそこから派生した栃木の益子焼が代表。益子焼はもともと簡素な形と装飾が特徴だったが、民藝運動の立役者でもある陶芸家の濱田庄司がこの地に窯場を開いたのを機に、大きく発展。他の土地の技法や特徴も取り入れた、多様なうつわがつくられている。

【中部】愛知

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|愛知|瀬戸焼(せとやき)|

焼き物一般を表す言葉「せともの」の元になったのが瀬戸焼。日本を代表する6つの焼き物「日本六古窯(にほんろっこよう)」のひとつでもある。日用の雑器を300年以上つくり続けている〈瀬戸本業窯(せとほんぎょうがま)〉の“麦わら手”や石皿は、稀代の食いしん坊・白洲正子が溺愛したことでも有名だ。

【近畿】兵庫、滋賀、三重

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|兵庫|丹波立杭焼(たんばたちくいやき)|

土鍋で知られる三重の伊賀丸柱焼(いがまるばしらやき)や滋賀の信楽焼(しがらきやき)など、歴史の古い焼き物が残る近畿地方。「日本六古窯」のひとつである丹波立杭焼も、平安末期〜鎌倉初期が始まりとされる。江戸時代を代表する雅やかな地域、京都や播磨に近い土地柄ゆえの、洗練された造形も魅力。

【山陰】島根、鳥取

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|島根|布志名焼(ふじなやき)|

国内でも特に民藝運動が盛んだった山陰。代表的なのは、英国の陶芸家バーナード・リーチも愛した島根の布志名焼や鳥取の牛ノ戸焼(うしのとやき)。人気が高いのは、化粧土で模様をつけるスリップウエアで知られる〈湯町窯(ゆまちがま)〉や、柳宗悦たちの指導の元に始まった〈出西窯(しゅっさいがま)〉など。

【四国】愛媛

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|愛媛|砥部焼(とべやき)|

質の高い陶石や砥石が採れることで知られるのが、四国随一の焼き物産地、愛媛県の砥部町。砥石クズの再利用から始まった磁器・砥部焼は、厚手で扱いやすい丈夫な素地と割れにくい形、灰色がかった白地に呉須(ごす)(青)や赤で施した染め付けが魅力。幅広い年代に人気がある。

【九州】福岡、大分、佐賀、熊本、鹿児島

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|大分|小鹿田焼(おんたやき)|

福岡の小石原焼(こいしわらやき)、熊本の小代焼(しょうだいやき)、佐賀の有田焼と唐津焼、鹿児島の薩摩焼など、九州は民藝のうつわの宝庫。大分の小鹿田では、現在わずか10軒の窯元が、約300年の間、門外不出の技術を継承し続けている。うつわ全面に細かく刻まれる“飛びカンナ”の意匠が特徴。

【沖縄】

『工芸喜頓』に聞く、奥深き民藝うつわの世界。

|沖縄|やちむん|

沖縄の焼き物は、15〜19世紀の琉球王朝時代に始まった壺屋焼(壺屋焼)の伝統を受け継ぐものが多い。おおらかな形や絵付けで知られるそれらのうつわは、「やちむん」(沖縄の言葉で焼き物のこと)と呼ばれている。特に人気が高いのは、〈北窯(きたがま)〉など本島の読谷村(よみたんそん)界隈にある窯元。

  • 石原文子

    石原文子 さん (いしはら・ふみこ)

    「工芸喜頓」店主

    フランス留学中に日本の民藝と出合ったのを機に、2013年、東京・世田谷で『工芸喜頓』を開く。全国へ出かけて買い付けたうつわが評判に。

※この号で掲載したうつわは、作家ものなど、雑誌発売時に店舗に同じものの在庫がない場合もあります。ご了承ください。

『クロワッサン』1032号より

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