うつわ好きのライフスタイルディレクター、山藤陽子さんの食器棚。
そんな理由で同じ食器ばかり使っていてはつまらない。色やサイズ、形を替えれば同じメニューが見違える。旅先で出合ったうつわ、受け継いだ一枚は物語を添えてくれる。日々の食卓が豊かに変わるうつわレッスン、スタートです。
撮影・青木和義 文・松本あかね
「作品」を日常使いする、気持ちよさと楽しさに目覚めて。
少し前まで「食器の数は最低限でよし」としていたという山藤陽子さん。その意識ががらっと変わったのは、『菓子屋ここのつ』を主宰する溝口実穂さんのお茶会に参加してから。
「おいしいという感覚以外にも、目で見る気持ちよさ、美しさの世界があったんだと。うつわ一つで食べたり飲んだりする行為が別の次元になることを教えてもらいました」
好きなうつわを毎日使っていると、所作が変わってくることも実感。
「シルクのドレスを着たら、自然に立ち居振る舞いが変わりますよね。同じように、うつわを大事に扱ったり、掌や唇に触れる感触を楽しむ時間を持つことで、所作も変わる。知らないうちに、心も整う気がしますね」
錆びたような質感、 滑らかな手ざわりが魅力の錆器(しょうき)シリーズ。
うつわは肌ざわりに惹かれると山藤さん。「ビジュアルが素敵だと思っても、手に取ってみたらがっかりすることも」。昼のうどんに、夜はサラダや「お揚げの炊いたの」にと、使わない日はない二階堂明弘さんのうつわは、硬質な見かけに反して手のひらにしっとり馴染む滑らかさ。軽くて薄く、口当たりもやさしい。
気分が明るくなる、 LAからやってきたアートなマグカップ。
「セレクトショップのイベントで出合って以来、少しずつ買い足しています。ポップなものはそれほど好きではないけれど、不思議とこれには惹かれます」。LAのアーティスト、ピーター・シャイアさんが手がけるマグカップは、まるで抽象画を立体にしたようなユニークさ。「これでコーヒーを飲むと自由な気持ちになるんです」
一日の始まりは、金属の風合いを持つ凛とした陶器のセットで。
「朝は甘いものを少し、それから大好きなコーヒーを大きなカップで飲むことが多いかな」。秋から冬にかけてはイチジクやレーズンなどドライフルーツを焼き込んだ手製のタルトやパウンドケーキ、スコーンが定番。前述の溝口実穂さんのお茶会で出合い、少しずつ揃えている安藤雅信さんのうつわ。中でも古い歴史を持つヨーロッパの合金製の食器を模したという銀彩ピューターシリーズは、朝のティーパーティのようなしつらいにぴったり。
※この号で掲載したうつわは、作家ものなど、雑誌発売時に店舗に同じものの在庫がない場合もあります。ご了承ください。
『クロワッサン』1032号より
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