くらし

【歌人・木下龍也の短歌組手】夫婦の愛が可能にすること。

〈読者の短歌〉
真夜中に「自戒を込めて」と書く人の他戒のみしか込められてなさ

(カラスノ/女性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
自戒を込めて掲載いたします。

〈読者の短歌〉
買ったものだけ捨てられるコンビニで捨てたいためのチューハイ開ける

(神戸麻衣/女性/テーマ「コンビニ」)

〈木下さんのコメント〉
味わうためでも酔うためでもなく捨てるため。それは「チューハイ」にとって最も不本意な終わりかただ。でも、自分の支配下にある何かを最もひどいやりかたで犠牲にしなければ、自分を犠牲にしてしまいそうになるくらいつらい日が、たぶんあるのだろう。「捨てたいためのチューハイ」は新鮮な響きだった。

〈読者の短歌〉
来世でもきみと暮らすよきみがもし人間ならば僕が犬だよ

(犬口マズル/テーマ「犬」)

〈木下さんのコメント〉
人と人、あるいは犬と犬に生まれ変わって「きみ」と深くわかり合いたいと願ってしまいそうになる。けれど犬と人は違う種族だからこそ、言葉が通じないからこそ、わからない部分も許せてちょうどいい距離感で長く共存できているのかもしれない。そんなことを思わせてくれる1首でした。散歩している犬とおじさんも前世では逆だったのかなと思うとマスクの下で口角が上がります。

どんどん短歌を作って応募してください!(撮影:木下さん)
木下龍也

木下龍也 (きのしたたつや)

歌人

1988年、山口県生まれ。2011年から短歌をつくり始め、様々な場所で発表をする。著書に『つむじ風、ここにあります』『きみを嫌いな奴はクズだよ』がある。

1 2
この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

人気記事ランキング

  • 最新
  • 週間
  • 月間