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【歌人・木下龍也の短歌組手】恋人との至福のひとときを短歌に込めて

第41回全国短歌大会大会賞を受賞して以降、精力的に活動を続ける歌人・木下龍也さんが読者の短歌にコメントをする連載『短歌組手』。毎週金曜日夜に更新をしていきます。短歌の応募もぜひお願いします。
豪華な内装の店内に一人。

〈読者の短歌〉
帰りには売り切れてると聞き買ったパンが帰りもあってまた買う

(春野さき子/女性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
「また買う」の従順さが人間によく似たロボットを見ているようで不気味だったのですが、行きで買ったパンがめちゃめちゃおいしかったから帰りも買った、むしろ売り切れてなくてラッキーだった、というシンプルな「また買う」理由を思いついたときに不気味の谷を越えることができました。

〈読者の短歌〉
ほんとうは自分はどこへも行けないと知っていたから東京に来た
(海野いづれ/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
こう言われてみると、僕もそうだったのかもしれないと思う。上京した人になら多かれ少なかれ誰にでもある、あったはずの感情を見事にすくいあげた1首。

〈読者の短歌〉
入り口に盛り塩のあるコンビニとないコンビニの時給がちがう

(桝枯井戸/テーマ「コンビニ」)

〈木下さんのコメント〉
未経験者も大歓迎。いつも何かが寄り添ってくれるアットホームな職場です。

〈読者の短歌〉
コンビニを出ておもむろにおにぎりを①、③、②の順番で剥く

(古河知尋/テーマ「コンビニ」)

〈木下さんのコメント〉
この歌のように剥くとどうなるんだろうと困っていたのですが、さすがインターネット。YouTubeに「コンビニおにぎりの開ける順番①②③を変えて開けてみた」という動画がありました。その動画によると順番通りに剥いても「①、③、②」の順番で剥いても特に変化はないようです。特に変化はないけれど、指示された順番に従わなかった、という小さな背徳感をこの歌の主人公は楽しんでいるのでしょう。

〈読者の短歌〉
寝そべったあなたの足を追いかけて冷えたわたしの足がはしゃいで
(木村槿/女性/テーマ「恋人」)

〈木下さんのコメント〉
布団のなかで行われる温度差の攻防。あの楽しさを結句(57577の最後の7)でうまく表現していますね。

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