神童がなぜ凡才に?など、3つの問いから脳の仕組みを理解する。
イラストレーション・鈴木衣津子 文・嶌 陽子
神童と呼ばれた小学生は、長ずるにつれて、なぜ凡才になってしまったのか?
小学生の頃は常にテストで満点を取っていた子どもが、なぜ中学生になって成績が落ちてきたのだろう……。
「小学生の頃は単純に暗記すればよい学習内容が多いため、記憶に頼る海馬系の活動が高いと成績がよい。ですが中高生になるとワーキングメモリを使う“前頭葉依存型”にならないと、記憶だけでは対応できなくなる。その場で情報を組み合わせ、答えを見つける課題が多くなってくるのです」
人類は、進化の過程で記憶よりも前頭葉、つまりワーキングメモリを発達させる道を選んだという。
「環境がずっと変わらなければ記憶だけで生き延びられる。しかし人類は常に環境を変えてきたので、生存、拡散するためには、その都度答えを出す戦略を取る必要があったのです」
私たち人間が今日まで生き延びられているのは、ワーキングメモリのおかげと言えるのかもしれない。
簡単に脳を鍛えられるじゃんけんトレーニング
ワーキングメモリのトレーニング法のひとつとして知られるのが"Nバックトレーニング"。N個前を記憶するトレーニングだ。今回はじゃんけんでやってみよう。紙などを用意し、上のじゃんけんのマークを右端から順にひとつずつ隠すようにして左にずらしながら、隠した1個前のマークに勝つようにする。1個前ができたら、次は難易度を上げて2つ隠し、2個前のマークに勝つようにしてみよう。
篠原菊紀(しのはら・きくのり)さん●公立諏訪東京理科大学教授。脳科学者。幼児教育や中高年の脳トレ開発のほか、テレビやラジオでも活躍。著書に『脳科学が教えてくれた 覚えられる忘れない! 記憶術』(すばる舎)など多数。
『クロワッサン』1030号より
広告