くらし

桐島かれんさんの部屋づくりアイデア。新居は緑と光と、好きなものに囲まれて。

  • 撮影・白石和弘 文・一澤ひらり 衣装協力・ハウス オブ ロータス

旅の記憶と家族の歴史に囲まれて寛ぐ。

リビングは桐島さんが丹精込めて育てている観葉植物が目を休める。音響が素晴らしい夫のオーディオでビートルズを聴くのも楽しみ。

これまで30回以上、引っ越しをしてきた桐島さん。昔の愛読書は住宅情報雑誌だったというほどの家好き、引っ越し好き。子どもの頃に母で作家の桐島洋子さんに連れられてあちこち旅をし、移り住んだ体験が大きいという。

「根なし草の母の血を引いているのか、一人暮らしを始めてからも毎年引っ越しをしていましたね。結婚するまでに25回ぐらいしたかな。夫は真逆で、すごくストレスになるみたい(笑)。私は旅も大好きで、引っ越しは旅に似ていて身軽になれるのが爽快なんです。住まいで苦手なものを外していくと、行き着く先は、ヴィンテージマンションや木枠の窓があるようなレトロな雰囲気の建物になっていきます」

結婚後、神奈川県の葉山と東京の元麻布に暮らしたが、どちらも築80年の洋館と日本家屋が連なる和洋折衷の趣のある古い家だった。

「昔の家は良質な建材を使って、丁寧に作られていました。だから大切にしようと思えたし、子どもが生まれてからの12年間は子育て中心だったので、家を整えるのが大きな喜びでした」

築80年の古民家からモダンな家に暮らして。

1.住宅情報誌で見つけた、葉山の築80年の洋館と日本家屋がつながった和洋折衷の古い家に暮らした。庭で長女と一緒に撮影(1995年)。(C)上田義彦『at Home』より
2.葉山から元麻布の家に。築80年の和洋折衷の古民家で、ガラス張りの半円形のサンルーム、寄せ木細工の床など、絵になる家だった。(C)上田義彦『at Home』より

その後は建築家・坂茂さんが設計したモダンな邸宅に住むように。

「新築の家になってからは『家育て』が始まりました。子育てと同じですよね。そこに住人の感性や価値観が反映されてしまうから手を抜けない。17年暮らして、子どもたちの成長とともに家も育まれて、楽しい時間を過ごせました。今回もどんなふうにつきあっていけるのか、楽しみでワクワクしているんです」

建築家・坂茂さんが設計したモダンな邸宅に17年暮らす。「シャッターハウス」と呼ばれ、全面がガラスシャッターで構成されていた。(C)上田義彦『at Home』より

新居のリビングには結婚当初に購入したル・コルビュジエのソファやミース・ファン・デル・ローエの寝椅子など、建築家がデザインしたスタイリッシュな家具や北欧の家具が配されている。

「すべてこれまで愛用してきたものばかり。夫が選んだ北欧のビンテージ家具はもう手に入らない貴重なチークなどで作られていて、空間に深みを与えてくれます。メインになる家具はいいものを買っておく価値はありますね」

北欧のビンテージの本棚には家族写真のコーナーが。桐島さんの祖父や祖母、母と兄弟の写真も飾られて、心の拠り所に。
余計なものが削ぎ落とされた北欧のテーブルでダイニングがシックな設えに。ミャンマーの漆器や中国の骨董が静かに佇む。

そこには夫妻が旅先で出合ったヨーロッパの調度品、インド、アフリカや中国、ミャンマーなどアジア各地の美しい手工芸品や民芸品が並ぶ。

「リビングには西洋と東洋、古いものと新しいもの、時代も国もスタイルも違うものが共存しています。でも統一感があるのはアンティークで落ち着いたトーンのものが多いからなんです。さらに、タイのセラドン焼の大きな壺に観葉植物の鉢を入れています。大壺やグリーンはとてもいいアクセントになって、部屋全体が一枚の絵画のようにまとまっていくんですよね」

棚には桐島家の家族写真、母や大叔母から譲られたものなど思い出の品々がさりげなく飾られている。

「ストーリーのあるものに囲まれていると、旅の記憶が甦ったり、家族の歴史が紡がれていくようで心安らぎます。ここにはいろんなものが置かれていますが、無駄なものは一つもありません。好きなものばかりに囲まれていたいし、それが豊かな時間を醸してくれる。一日一日を丁寧に暮らして、人生の年輪を重ねていきたいですね」

きれいなグリーンのタジン鍋は母の桐島洋子さんから贈られたもの。 左の銅像はアフリカの奥地で伝染病の撲滅に献身した大叔母から。
玄関で客人を招き入れる、お守りのような動物たち。これは中国のアンティークの招き猫。
日本の骨董で招き猫の香炉。
アフリカ・マリの仮面。
「夫がインドで買ってきた石像です。世界各地で見つけてきた工芸品を家のそこかしこに飾っています」
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