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【歌人・木下龍也の短歌組手】表記を工夫して短歌を魅せる。

第41回全国短歌大会大会賞を受賞して以降、精力的に活動を続ける歌人・木下龍也さんが読者の短歌にコメントをする連載『短歌組手』。今週から毎週金曜日夜に更新をしていきます。短歌の応募もぜひお願いします。
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〈読者の短歌〉
四階の誰も使わぬテラスだけ低確率でカマキリが出る
「カマキリの発情期は秋で、この時期の雄はよく飛び回ってるらしいです。」
(奥平/男性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
「低確率」が効いてますね。高確率だと情報の有益性が高まってしまう。テレビや広告が吐き出す有益っぽく見える情報に慣れた我々にとって、こういう無益な情報は新鮮で頭に残りやすい。「誰も使わぬ」の「ぬ」がどうも気になるので「忘れ去られた」に変えてもいいかもしれませんね。

〈読者の短歌〉
「」「なんか言ってよ」
「なんとなくの沈黙についてです。かぎかっこ、かぎかっことじ と読んでください。」
(百乱陽姉朱/男性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
こんな短い表記の57577はじめて見ました。やられた〜。

〈読者の短歌〉
図書館で盗んだ本を金にして 霊視専用眼薬を買う
(嘔吐彗星/テーマ「本」)

〈木下さんのコメント〉
亡くした母親の姿をもう一度見たい、と願いながら「霊視専用眼薬」をさして目を開くと鼻すれすれくらい近くに母親の怒り顔があるのでしょうね。急に怖い話をしてすみません。

〈読者の短歌〉
元彼のグリーンティーの香水をそしらぬ顔で夫へすすめる

(かなん/女性/テーマ「匂い」)

〈木下さんのコメント〉
また怖い話でした。すみません。

〈読者の短歌〉
胸元にでけえホクロがあるんすよ王の印になりませんかね
「コンプレックスが王の印になればいいのにな、と思って詠みました。」
(音彩さとや/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
それは「王の印」だ。胸を張って生きよ。

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