くらし

鉄道について、ゆっくり話そう。【土屋礼央さん×蜂谷あす美さん 対談】

思いどおりに旅行できないご時世ではある。が、鉄道旅は楽しいし鉄道そのものも面白い。独特の視点を持つ二人の話は尽きません。
  • 撮影・青木和義 スタイリング・伊藤省吾(sitor/土屋さん) 文・黒田 創 写真・アフロ 撮影協力・東武博物館(展示物の公開は状況によって変更する場合があります)
(左)土屋礼央さん「RAG FAIR」リードボーカル (右)蜂谷あす美さん 旅の文筆家

遠方で古い車両に再会すると、込み上げるものがあります。(土屋さん)
乗れば遠くに連れて行ってくれる、が、鉄道好きの原点です。(蜂谷さん)

テレビ番組『タモリ倶楽部』の人気企画、「タモリ電車クラブ」のレギュラーであるミュージシャンの土屋礼央さんと、昨年女性向けの鉄道本を上梓した文筆家の蜂谷あす美さん。こよなく鉄道を愛する二人が、その魅力をたっぷり語ってくれました。

蜂谷 私は福井出身で、高校時代JR越美北線(えつみほくせん)というローカル線で通学していたのですが、1本逃すと次の列車は3時間後。それで駅のホームで待っていると、特急列車がたくさん通るんです。当時だと〈雷鳥〉や〈しらさぎ〉に〈サンダーバード〉。夜になれば青森や北海道に向かう寝台列車の〈日本海〉や〈トワイライトエクスプレス〉。目の前を行き来する特急は数時間後には遥か遠くの街なのに、私といえば1両のローカル線で帰っていく。思春期特有の「地元を出たい」思いとも相まって、乗るだけで遠くに運んでくれる鉄道に強く憧れるようになりました。

土屋 なるほどー。でも、10代の若い女性に同好の士はいたんですか?

蜂谷 いえ、なので高校時代は街の書店でおじさんたちに交じって鉄道雑誌を立ち読みしていました。その後大学入学を機に上京し、鉄研(鉄道研究会)に入部したら一気に趣味が全開に(笑)。

土屋 鉄道好きといっても「撮り鉄」「乗り鉄」などのジャンルがありますが、僕は「企業努力鉄」というかなり特殊なタイプです。鉄道会社の努力によって路線が便利になるのを肌で感じる。そこに無上の喜びを覚えます。

蜂谷 何がきっかけで、その「企業努力鉄」に……?

土屋 昔、京王井の頭線で音楽学校に通っていた頃、吉祥寺〜渋谷間の運賃が190円から210円に値上げしたんです。それ自体はよくある話だけど、数年後に再び190円に戻したんですよ。えっ、値上げした運賃を値下げ!? と驚いていたら、駅のポスターに理由が書いてある。要は渋谷駅の改修費を捻出するために値上げをしたけど、予想より工事費が少なく済んだので、還元の意味で値下げをしたと。

蜂谷 通常、企業なら、その余剰金はとっておきますよね。

土屋 なのに京王は乗客に還元してくれた。なんて素晴らしい会社なんだと感激しましたよ。その時に、鉄道は半分優しさでできている、乗客のために日々努力しているって、実感しました。それが企業努力鉄のきっかけです。

土屋さんの会員証は超レアもの!

雑誌『鉄道ファン』年末号恒例の付録ダイアリー。使いやすい鉄道路線図が掲載されており、土屋さんの鉄道旅の大事なお供となる。

『タモリ倶楽部』の「タモリ電車クラブ」で進行役を務める機会が多い土屋さん。会員証はタモリさんが認めた鉄道好きだけに授与。

蜂谷さんの旅の必携グッズ。

その地域にしか走っていない車両を撮るのは鉄道ファンの楽しみ。頑丈さに定評のあるオリンパスのコンパクトカメラ《TG-5》を愛用。

スマホでも列車時刻は調べられるけど、旅程を立てたり修正する際に便利なのは紙の時刻表。蜂谷さんは小さなサイズを必ず持参する。

何本もの列車を乗り継ぐ蜂谷さんの旅に重い荷物は不要。両手が自由で身軽なリュックが基本。いくつかのサイズを揃えて使い分ける。

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