自然災害が発生した際に最も役立つ情報源と言われるのがラジオ。コミュニティ・メディアの視点からラジオについて研究する情報科学芸術大学院大学教授の金山智子さんに、災害時になぜラジオが頼りになるのかを聞いた。
「ラジオは媒体としては古いですが、災害が起きた際に付き物の停電でも、電池やソーラー充電を使えば聴くことができるのが強みです。また持ち運びが容易で、避難先などでも音が拡散するので、多くの人と共有することもできます。最近ではケータイから情報を得ようと考えますが、アクセスが集中すると、つながらないことがあります。ラジオはこうした輻湊(ふくそう)がないことも優位性があるのかと思います」
金山さんは2011年3月11日に発生した東日本大震災の直後に現場に出向き、さまざまな支援活動を行った。その際に見聞きしたのは、
「太平洋沿岸部の市町村は、津波が襲ったこともあり、インフラが使えなくなり、そこに住む人はテレビが見られなくなるなど情報が遮断されました。新聞も、印刷所が被災にあったところは、輪転機が使えずに手書きの情報を自治体に張り出すことしかできなくなっていました。その反面、ラジオは各地で臨時災害局が開局して、被災した住民に向けて避難場所の案内や、食料や飲料水の供給状況などを伝えていました。家が倒壊や浸水して、移動もできなくなり孤立した人はラジオからのこうした生きるための情報だけが頼りでした」
では災害に備えるにあたり、日頃からどうラジオと接して、どんな局を聴くのがよいのか。
「何より大切なのは、自宅や職場でどの局の電波が入るかをチェックしておくこと。AMラジオに使われる電波は広範囲に届きますが、ノイズが起こりやすく、音質が良くないのが難点です。FMラジオは音質がクリアですが、障害物に遮られやすく、遠くまで届きにくいという特徴があります。どちらの電波のどの局がよく入るのかを試聴したり、車を持っている人は、駐車場でカーラジオをチェックして、よく聴こえる局をあらかじめセットしておくと災害時に車の避難になった際にストレスなく使えると思います」