じつはクロワッサンの創刊当初から、男性が妻に対して不平、不満をもらす「男のグチ・皮肉・泣きごと」というコーナーがありました。これがもう時代を感じさせるジェンダー観のオンパレードで、とてもじゃないけれど紹介できない内容。でも、今回は女性の側から、しかも昨年惜しまれながら亡くなった作家の田辺聖子さん(1928- 2019)のバージョンとあって、ふだんと違って名言が満載でした。哀悼の意を込めて、2回にわたって田辺さんの言葉を紹介します。
まずは、結婚について。田辺さんはいい人がいなければ結婚は急がなくてもいいし、うまくいかなかったら、無理せずどんどん離婚すればいいと断言します。大切なのは自分に合う人、つまり〈しゃべり合える相手〉を見つけること。たわいもないことを話せる相手がいれば、グチを言う必要はなくなるというわけです。
田辺さんと結婚とくれば、夫の川野純夫さんをモデルにした「カモカのおっちゃん」との息のあったやりとりを描いたエッセイが思い浮かびます。
田辺さんが開業医の川野さんと結婚したのは、37歳のとき。しかも川野さんは再婚で、4人の子持ちでした。まわりからはすぐ離婚するだろうと思われたものの、2002年に川野さんがこの世を去るまでずっと仲良し。2人を結びつけていたのは、晩酌をしながらの毎晩のおしゃべりでした。名言は、そんな田辺さん自身の結婚生活から導き出された、シンプルながら実感のこもった言葉なのです。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。