くらし

熊谷真実さん・中澤希水さんの家族の物語。

夫婦は、家族であり、一方で一番近い他人でもある。長らく関係性を続けていくには、二人にしかわからない努力もしてきているはず。
でも、外から見ても素敵だなと思う夫婦の間に必ずあるものは、お互いへの尊敬と感謝。見失わない工夫、教えてもらいました。
  • 撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 坂田佳子(熊谷真実さん) 文・森 綾

自粛期間は新たな試練。パワーバランスをもう一度見直す機会に。

(左)熊谷真実さん 女優 (右)中澤希水さん 書道家

還暦を迎えた女優・熊谷真実さんと、42歳の書道家・中澤希水さん。18歳の年の差は、二人を目の前にするとまったく感じられない。結婚して8年目になる二人の出会いは、熊谷さんが書道の先生として中澤さんをネットで探しだしたことでした。

「先生がイケメンなら頑張るかなと。タレ目にやられました」(熊谷さん)

「最初は女優とは知らず、おっちょこちょいだけど一生懸命な人だな、と。初回にいきなり筆を服の上に落として墨まみれにしたから(笑)。でも学ぶ姿勢は真摯でした」(中澤さん)

1年ほどは師匠と弟子の関係。二人が互いを意識したのは、中澤さんが当時の彼女と別れたことがきっかけ。

「友だちづきあいの後、川越のアトリエ兼自宅に真実さんが遊びに来た時、急に『ずっと好きだった』と。直後に彼女が大阪へ1カ月巡業に行っている間に僕の気持ちも固まりました。付き合うなら、結婚を前提にと僕から」(中澤さん)

「夫婦は勉強の場。お互いに人として成長していけたら」(中澤さん)

仕事による別居状態で離婚の危機。話し合い、距離を縮めた。

中澤さんは結婚を申し込んだ時点で「二人の子どもはそれぞれの作品」と納得していたという。しかし熊谷さんは「いいの? 子どもがいなくても」と、確かめずにはいられなかった。

「ご両親は孫の顔が見たいと思っていらしたでしょうし。でも彼は『それは真実さんが身長180センチになりたい』って言うのと同じと、笑ってくれました」(熊谷さん)

春から交際、秋には入籍。お互いに唯一無二と思えたのは、熊谷さんが中澤さんの「作品に向かっていく武士のような滅私の姿勢」、中澤さんは熊谷さんの「エネルギーとストイックさ、人に対する行動力」に打たれたから。しかし、互いを尊敬しあいながらも、最初の3年は些細なことで喧嘩も。

「育った環境も物の捉え方も性格も違う。だから喧嘩ではなく『激しい話し合い』(笑)という未来を見据えたものに変えていった感じですね」(熊谷さん)

すれ違いから、離婚の危機もあった。

「僕が京都に教室をもち、彼女も地方公演で1カ月会えないような時期でした。こんなふうに別居状態なら、夫婦でいる意味がないのではと」(中澤さん)

二人は真剣に話し合い、関係を修復しようと歩み寄る。

「私も仕事や旅行を調整し、夫も京都を引き払い、お互い出張があっても2泊3日で戻ってくる生活に戻しました。おかえり、ただいま、って言い合うことこそ大切だと気づいた」(熊谷さん)

「真実」と書かれた中澤さんの書。踊っているような、天真爛漫な熊谷さんのイメージが絵のように表現されている。赤いタオルは還暦祝いにロゴをデザイン。
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