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記憶にとって大切なことは、記憶できるのだという自信をもつこと――多湖輝(心理学者)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、「脳トレ本」の元祖を生み出した人物の言葉から、記憶力を保つ秘訣を学びます。

文・澁川祐子

記憶にとって大切なことは、記憶できるのだという自信をもつこと――多湖輝(心理学者)

1979年3月25日号「今、いちばん欲しいもの」より
1979年3月25日号「今、いちばん欲しいもの」より

前回に続き、〈今、いちばん欲しいもの〉を聞く読者アンケート特集から。〈10年前の記憶力〉という答えに、なかなか痛いところを突いてくるなとびくっとしたのですが、こう答えた人の年齢を見たら25歳。「いやいや、まだでしょ! これから先、もっと忘れやすくなるから!」と心のなかで思わず叫びました。

そんな答えに対し助言しているのは、『頭の体操』がロングセラーとなった心理学者の多湖輝さん(たご・あきら、1926-2016)。〈記憶は反復すればするほど、残っているもの〉といい、〈10年前の記憶力のほうがよかったはずだと思うのは、今のあなたが現在覚えたものを反復しないからなんですよ〉と語りかけます。その手助けとして以下のような記憶するコツを説いています。

・覚えたいことを感動化してみる(驚きと感動が鮮明な記憶をつくり出すため)
・「覚えなくては」と自分に言い聞かせる(緊張感があると覚えやすい)
・覚えたいことを分類、整理する(整理されることで、記憶から出し入れ自由になる)

そして大事なのは、今回の名言にあるように「記憶できるのだという自信をもつこと」。〈自信がないと脳細胞の活動に抑制がかかり〉、記憶力が鈍くなるのだといいます。

たしかに「忘れるかもしれない」と思うよりは、「覚えられる」と思ったほうが精神的なストレスは少ないはず。これからは積極的に「自分はまだまだ記憶できる!」と自己暗示をかけていこうと心に刻みました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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