未知の感染症の到来で明らかになったのは、同じ病を原因としながら、国によって示す反応はじつに様々であるということだ。さらにその反応をそれぞれが勝手に解釈し合い、混乱が生じている。そこで、広い視野に立つための本を一冊、この事態を受け止める日本社会を考える二冊を提示したい。
視野を広げるためにすすめたいのが、初めて病と人類の関係という視点に立って書かれた『疫病と世界史』だ。執筆時の1975年は、天然痘が撲滅されたと言われた時期。人類は初めて科学の力で感染症を克服した、という当時の楽観に対して疑問を呈した、非常に示唆的な本である。