くらし

平等は人権の根本に関することであり、無条件に与えられるはずのもの――田中寿美子(評論家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、女性の地位向上に尽力した人物の言葉を紐解きます。
  • 文・澁川祐子

平等は人権の根本に関することであり、無条件に与えられるはずのもの――田中寿美子(評論家)

1979年2月25日号「“働く女”の働く条件を考える」より

1979年といえば「女子差別撤廃条約」が国連で採択された年。翌年、日本も署名をしましたが、法整備に時間がかかり、「国連婦人の10年」の最終年にあたる1985年に批准されました。なお、その際に整備された法律が「男女雇用機会均等法」です。

そうした動きのなか、女性の労働条件の見直しをめぐる議論を取りあげたのがこの記事。主に論じているのは、生理・出産休暇、深夜業務禁止などの女性保護規定の是非です。誌面は、実際に働く女性の声、識者の意見、国際比較表とバランスのよい構成になっています。

そのなかで唯一、男性の労働条件にも言及していたのが、政治家として女性の地位向上にも尽力した評論家の田中寿美子さん(1909-1995)。名言を含む前後の発言を引用してみます。

〈保護を外さないと平等になれないぞ、という論法はナンセンス。平等は人権の根本に関することであり、無条件に与えられるはずのもの。労働条件にしても、まず、男性の労働条件を引きあげるべきです〉

女性の保護規定を撤廃し、男性にあわせることが平等の実現ではなく、深夜残業など無理が横行する男性の労働条件も見直すべきという意見。近年でこそ、男性の長時間労働が男女平等を阻んでいるという認識が広まってきましたが、当時からその問題を的確に見抜いていた田中さんは卓見の持ち主といえるでしょう。

今回の名言に表れている、平等に対する確固たる態度。問題の本質を捉える明晰さは、そうした揺るぎない信念から生まれたのだろうと解釈しました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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