くらし

【紫原明子のお悩み相談】残念な夫にずっと耐えてきました。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回は高圧的な態度の夫の言動に耐え続けてきた女性からの相談です。

<お悩み>

夫との関係について相談させて下さい。結婚当初から、妻とは夫のために働くもの、というような俺様気質のある人で、束縛も強く、自分は友人とゴルフや飲み会に行くのに、私が行こうとすると、行かせてくれることは多いですが、快くは思わないようで、それは行かなきゃならないものなの?誰と?どこの店?何食べるの?何時に帰る?と聞いてきます。初めのうちは答えていましたが、だんだん適当に答えるようになり、今は最低限しか答えません。出かけることを話すと当日まであれこれ言われるのでギリギリで話すことにしています。発達障害のある長男がいますが、夫は理解するどころかお前の育て方が悪いと言いきり、協力どころか息子に合った専門家の助言を取り入れようとするなど、私の邪魔をし続けてきました。

何を話しても、それは違うんじゃない?と、必ず否定から入るので、私も下の娘たちも、勿論長男も次第に夫とは話をしなくなってきています。最低限の会話はしますが……。自営業なので大変なのはわかるのですが、父親として少しでも子供たちと関わって欲しかったし、それが無理なら私の話を聞いて、間接的にでも子供たちと繋がる事もできたはず、と思うのですがそういったことを言うと、「俺が働かなかったらお前たちは生活できないんだぞ。誰のお陰でこんな大きな家に住んで教育も受けられていい生活ができていると思ってるんだ!」と言うのです。そして、嫌なら出て行けと。私が本当に出ていくとは思っていないので言うのだと思いますが、鬱病になった時期もあり、その時にも、夫は「鬱なんて自分に原因があるからなるんだ、俺だっておかしくなりそうなくらい忙しいのに、俺のほうが死にそうだ」と非難しかありませんでした。子供が大きくなるまでなんとかもちこたえようと家に居続けてきましたが、自分の人生ってなんだろうと考えるようになりました。そろそろこの状況を終わりにして自分のやりたいことをして生きてみたいと強く思い始めています。夫は自分は偉い、自分は頑張ってる、すごいんだと言い、誰も言ってくれないから自分で言ってるんだとよく言います。もうそんな変な言葉も聞き飽きてため息しか出てきません。夫は両親共仕事で忙しくかまってもらえず祖父母に面倒を見てもらうことが多かったと聞いています。いろいろと満たされず、今も家族から疎まれ寂しいのだろうとは思いますが、私はあなたの母ではないのです!と叫びたいです!
(相談者:まきこ/女性/50代。週3で保育士のパートに出ています。子供は3人とも成人していますが、みんな自宅から仕事に行っています。夫は4歳年上。)

紫原明子さんの回答

まきこさん、お疲れさまでした。
お子さんとご自身を守りながら、ここまでよくぞ頑張ってこられました。
お子さんはもう皆さん成人していらっしゃるとのこと。これからが人生のセカンドシーズン、まきこさんが主役、本番ですね。

旦那さんはとても可哀想な方なのでしょう。本当は優しくされたり大事にされたりしたいのに、そのためにどうしたらいいかをご存知ないんですね。まきこさんと出会って結婚されたこと、3人のお子さんに恵まれたことは、旦那さんがそれを学ぶ最大のチャンスだったはずなのに、それも活かすことができなかったというのはつくづく可哀想、そう言うよりほかありません。

家族からの暴言を日常的に浴び続けていると、段々とそれが当たり前になってきて、「自分はそう言われて当然のダメな人間なんだ」と自尊心を根本から折られてしまう人もいます。その状態が異常であることすら分からなくなって、すっかり心を殺してしまう人もいます。仮にそうなっていたとしてもおかしくない状況で、叫び声を失わず、勇敢にも次の場所へ旅立とうとされているまきこさんを、私は心から尊敬します。

まきこさんが幸せに暮らせる場所はほかにいくらでもあります。まきこさんとの出会いを心待ちにしている人だって、きっと世界中に沢山います。旦那さんが出ていけと仰るのであれば、遠慮なくそうさせていただきましょう。

ただ、まきこさんのこれから先の人生は長いので、生活の不安が大きければ、いくら旦那さんからのモラハラがなくなったとしても、せっかく手に入れた自由を存分に謳歌することができません。ですので、離婚される場合には、旦那さんの暴言に対する慰謝料をきちんともらい、まきこさんのこれまでの貢献に対して適切に財産分与をしてもらわなければなりません。

旦那さんが逆上してまきこさんの身に危険が及んではいけないので、旦那さんにはなるべく知られないようにしつつ、まずはぜひ弁護士さんに相談してください。またお子さん方は味方になってくれそうでしょうか? 独り身になったとき一番大きな負担になるのは家賃なので、お子さん方と一緒に住んで、家賃をシェアするという手もあるでしょうか。……いや、せっかくなのでこの際「お母さん」からも卒業しちゃいましょう。だってこれからもし、まきこさんに新しい恋人ができたとき、子どもたちと住んでいると家に連れ込めないですからね。もう大人なのでみんなはみんなで頑張って、お母さんもお母さんでがんばります、ということで、家族全員の新しい門出とするのも良いでしょう。

結婚生活、うまくいくに越したことはないのでしょうが、一方でうまくいかない結婚生活と、それをきちんと終わらせる経験というのは、平穏にやっているだけでは決して得られない多大な学びをもたらしてくれます。産みの苦しみと言いますが、私たちが新しい自分に生まれ変わるときにもやっぱり、胎児が狭い産道を通り抜けるような、孤独な苦しみに耐え抜く時期が必要不可欠なのだろうと思います。

まきこさんの出口はもうすぐそこに見えていますね。

新しい世界がさらなる幸福と刺激に満ちた、素晴らしいものとなりますように。心からお祈りしています。

紫原明子さんへのお悩み相談はこちらから!

イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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