50代からのリノベーションで知っておくべき3つのこと。
イラストレーション・木下綾乃 文・野尻和代 写真提供・スタイル工房
子どもの独立や親との同居、親からの相続、夫や自身の定年など。50代以降にとって、マイホームのリノベーションは、家族構成の変化をはじめ、人生の節目がきっかけになることが多い。とはいえ、資金はできるだけ借りたくないし、実際問題として借りるのも容易ではなくなってくる。
「リノベーションをするとなると、あれこれ手を入れたくなりがち。でも、限られた自己資金内で満足のいく改修をするには、どこに不便を感じているのか、求めていることは何か、初心を忘れないことが大切です。欲張りすぎると、なかなかプランが決まらないことが多い」と語るのは、数々の個人宅の改修を手がける、『スタイル工房』チーフプランナーの鈴木ゆり子さん。
その上で、「プラスαで何ができるのかという提案をリフォーム会社に求めることが大事。それが会社との相性を見極める目安にもなります」とも。
やるべきこと、やりたいことにそれぞれ優先順位をつけて、コミュニケーションを取りやすいリフォーム会社と二人三脚で。これが、豊かで快適な住まいづくりを成功させる鍵になる。
鈴木ゆり子(すずき・ゆりこ)さん
『スタイル工房』チーフプランナー。大学卒業後、設計事務所勤務などを経て現職。施主と一緒に楽しみながらの住まいづくりが信条。リフォームコンクールで数多くの受賞歴を持つ。
1.リノベーションでどこまで変えられるの?
マンションにしろ、一戸建てにしろ、持ち家の内装は原則として自由にリノベーションは可能。しかし、場所や条件によっては変えられないところがある。
まずはマンションの場合、改修できるのは専有部分のみ。
「サッシ、玄関扉、上下階につながる配管、躯体などの共用部分はさわれません。さらに、自治会の管理規約によって、床の変更や水回りの移動が不可の場合も。前もって規約の確認が必要です」
中高層マンションに多い、柱と梁を組んで建物を支える『ラーメン構造』は、室内の壁がほぼ移動可能なので自由度も高い。が、低層マンションに多い『壁式構造』は、壁や床など面で建物を支えているため、間取り変更には制約が。
一戸建ては、「増築や半分以上の大幅改修をするときには建築確認申請が必要となりますが、比較的自由度が高い」と、鈴木さん。ただし、マンション同様、工法や構造によっては、間取り変更ができない部分もあるので要注意。
一戸建てとマンションのできること、できないこと
【壁】
一戸建て(○)
木造在来工法や鉄骨造は撤去や移動も可。パネル構造や2×4工法は動かせない部分も。
マンション(△)
内装の変更は可能。間仕切り壁の撤去や移動はできるが、壁式構造の場合は不可。
【床】
一戸建て(○)
基本的にはほぼ可能で、仕上げ材に制約はない。土間や掘りごたつは建物の工法次第。
マンション(△)
遮音性能は管理規約による。カーペット、畳からフローリングへの変更不可の場合も。
【天井】
一戸建て(△)
天井裏にスペースがあれば天井高を上げたり、吹き抜けもできるが、工法により不可。
マンション(△)
内装制限の範囲内で可能。天井裏次第で、まれに天井高を上げることも可。
【サッシ】
一戸建て(○)
取り替えはできるが周辺の内、外壁の補修が必要。窓の新設は防火規制を要確認。
マンション(×)
共用部分にあたるので変更不可。断熱性能を上げる二重窓にすることができる場合も。
【バルコニー】
一戸建て(○)
重量の制限はあるがウッドデッキ風の床にしたり、手すりの材質の変更などは可能。
マンション(△)
避難器具の障害にならない範囲内ならば、固定しない床を敷くことはできる。
【電気設備】
一戸建て(○)
移設、増設などほぼ可能。オール電化にしたり、契約容量を上げたりすることはできる。
マンション(○)
増設や位置の変更はできる。ただし築古の物件は、容量に制限がある場合も。
【水回りの移動】
一戸建て(○)
1階は比較的自由に移設、増設できるが、2階の改修は1階にも影響がでる場合も。
マンション(△)
排水勾配がとれる範囲内ならば移動もできる。トイレの移動はできないことが多い。
【玄関ドア】
一戸建て(○)
まわりの壁の補修が必要になることがあるが変更可。防火規制の確認も必須となる。
マンション(×)
ドア交換は不可。鍵の交換はオートロックの場合、高額あるいはできないことも。
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