40〜50代こそ考え時。心地いい住まいの必要条件。
家族の形に変化が起こりがちな読者世代は、家の“これから”を考える時期を迎えています。
老後も視野に入るものの、それに縛られない。自由に住まう人々に学ぶ、理想の家とは。
文・嶌 陽子
いま住みたいのは、工夫のある家。
人生後半を豊かに過ごすための住まいとはどんなものか。数多くの家の新築やリフォームを手がけてきた建築家の水越美枝子さんと、数年前に自宅マンションをフルリフォームしたエッセイストの岸本葉子さんに話を聞いた。
「家に自分を合わせるのではなく、自分の暮らしに合わせた家に住む。その心地よさを実感しています」という岸本さん。水越さんも、忙しい人にこそ、ストレスなく動けて心から寛げる“自分が主役の居場所”が必要だと話す。
「生活に合った動線や収納。自分好みのインテリア。これらが揃うことで、家は格段に居心地のよい場所になります」
住まいの見直しは、体力や順応性がある60代くらいまでにしておいたほうがいいと話す水越さん。今こそ“自分らしく暮らせる快適な住まい”とは何か、あらためて考えてみよう。
寒暖差、自然災害に備えて住む人の健康と安全を守る。
「リフォームをして一番良かったのは、断熱材や二重サッシなどを入れて寒さ・暑さ対策をしたこと。体がずいぶん楽になりました」(岸本さん)
冬の寒暖差によるヒートショックや夏の猛暑から身を守るためには、外気の影響を受けにくい家が鍵となる。
「床下に断熱材を入れると冬は室温が2〜3度上がります。断熱カーテンなどを取り入れる方法もありますが、窓を二重サッシに替えるのが寒さ、暑さには最も効果的。夏は天井に断熱材を足す、窓の外側に庇やよしずをつけるなどの対策もあります」(水越さん)
地震や台風など、自然災害への備えも意識したいことのひとつ。水越さんによれば、一戸建てならリフォームにより耐震補強できる場合もある。
「屋根や外壁も業者に相談しつつ、定期的に点検するとよいでしょう」
心身に負担をかけず家事を 楽にこなせる。
効率のよい家事動線を考え抜くと、無駄なく動けて家事がぐっと楽になる、と水越さん。たとえば洗濯機がある場所が1階で、物干し場が2階にあると、階段の上り下りが大変。思い切ってリフォームの際に、洗面所、浴室ごと2階にするのも手だ。それが無理でも動線を徹底的に見直して家電や家具の配置、収納場所を工夫すれば、暮らしやすさは格段に上がる。
いざという時に頼れるコミュニティ がある。
「一度、鍵を忘れたまま家を出てしまい、オートロックのため締め出されてしまったことが。姉が比較的近くに住んでいるものの、結局助けを求めたのはお隣でした」(岸本さん)。非常時に頼れるのは、やはりご近所。日々の挨拶など、最低限の付き合いはしておきたい。また引っ越しを考える際は、その地域の住人や町の雰囲気との相性も重要。違和感がないか、充分に検討を。
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