経験上この噺の上演頻度を桜前線風に申し上げると、2月中旬から下旬にかけて各寄席で開花宣言。3月上旬に四分~五分咲き、中旬から下旬は一気に満開となって4月上旬まで続き、中旬にかけて散ってゆく、てなところ。この時期は連日落語でお花見日和です。
この噺を得意にしていた故・入船亭扇橋師匠は「落語の季節感は少し先取りがいいんだよ。この噺も花が満開になる前までがいいね」と教えてくれました。続けて「お正月は初“春”ってくらいだから」と言って、ときおり元日からの初席でも演じていました。私は内心「さすがに早すぎないかしら」とは思っていましたが。某師匠は10月にこの噺をかけて楽屋で周りに「早すぎ」と言われると「早くない、今年の春の名残を惜しんだんだ」って。これにはあきれて一同黙ってしまいましたよ。