くらし

工芸の全魅力に迫る最後の展覧会。『所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い』(東京国立近代美術館工芸館)

  • 文・知井恵理
平田郷陽 《桜梅の少将》1936年 東京国立近代美術館蔵 本物の人間そっくりな「生き人形」の技を生かした名品。衣装や爪などの細部まで精巧ながら、全体のバランスも見事。

明治時代に建てられたゴシック様式レンガ造りの東京国立近代美術館工芸館。この風雅な趣を残す建物での最後の展示となるのが本展。工芸家たちの言動や出来事から20のキーセンテンスを抽出し、工芸が辿ってきた歩みや作品に込められたパッションに迫る内容となっている。

「実は、『工芸』は明治維新後にこの分野を指すようになった言葉。さまざまな作家たちが『“工芸”とは何か』『どんな思いを込めて作るか』ということを、作品を通して表現してきました。その情熱を感じていただけたらと思います」(東京国立近代美術館主任研究員・今井陽子さん)

展示は5章で構成され、「日本人と『自然』」というテーマから始まる。動植物モチーフを立体的に浮かび上がらせた高浮彫(たかうきぼり)の花瓶、蒸気が立ち昇る様子や空の色を写し取ったかのような織物からは、古来、自然を愛でて暮らしに活かしてきた日本人ならではの感性に共感を覚えることだろう。次章の「オン・ステージ」では、壁から生えたような赤い手、どこまでもリアルな12羽の鷹など、作品が放つ迫力にただただ圧倒!

「『赤い手ぶくろ』は国際ビエンナーレに、『十二の鷹』はシカゴ万博へ出展され、日本の工芸や文化を世界へ知らしめようという気概が漂います。後者は国内でも人気で、お披露目には2万人が集まったという記事も残っているほど! 今回は重要文化財指定後の初の全点展示です」

そして、民芸から桃山復興までさまざまな流れが登場する「回転時代」や「伝統⇔前衛」、過去のしがらみから解放され多様性が生まれた「工芸ラディカル」に続き、総計200点が鑑賞できると、見応え充分だ。

「工芸は、古来の日本の言葉でいうと『調度』に近いと思います。機能や実用性を前提としつつ、ただ便利なだけでなく、日々の暮らしを少しいいもの、幸せなものにしてくれる。なぜなら、それを届けたい相手への気持ちが込められているからです。その思いに触れてみてください」

小名木陽一 《赤い手ぶくろ》1976年 東京国立近代美術館蔵 縦糸にはロープ、横糸には裂いた布を使用し、蓑などをヒントに考案した立体織りで作られている。中は空洞。
四谷シモン《解剖学の少年》1983年 東京国立近代美術館蔵 内臓を露わにし、端正な顔立ちで遠くを見つめる球体関節人形は、人形の定義や存在意義を考えさせられる。
鈴木⻑吉 《十二の鷹》1893年(部分) 東京国立近代美術館蔵 パリを拠点に日本の美術を海外に知らしめた美術商、林忠正の考案によるもの。重要文化財指定後初の公開。

所蔵作品展 パッション2 今みておきたい工芸の想い』
〜3月8日(日)

東京国立近代美術館工芸館(東京都千代田区北の丸公園1-1) TEL.03-5777-8600 営業時間:10時〜17時(入場は閉館30分前まで) 月曜休館(2月24日は開館、2月25日休館) 料金・一般250円。3月1日は無料観覧日。
www.momat.go.jp

『クロワッサン』1015号より

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