くらし

大切なのは、メリハリのある使い方。「好き」への出費は自分への投資。

万事節約ばかりは味気ない、使うべきところには使ってこその人生。おしゃれへの投資を惜しまない達人、輪湖もなみさんに聞きました。
  • 撮影・青木和義 文・石飛カノ
輪湖もなみ(もなみわこ・もなみ)さん●スタイルレシピ代表取締役、ファッションプロデューサー。『ジュンヤワタナベ』の白いプリーツシャツ。「私は背が高いのでシャツも大きく広がるデザインのほうがバランスがとれます」。パンツは『アクネストゥディオズ』。

「50代のファッションは 自分の軸を決めるとかっこいい。」

ミランダかあちゃんのスタイルレシピ」は輪湖もなみさんのファッションブログ。私服スナップで自身が登場、そのセンスと理論が読者の絶大な支持を得ている。堂々と公開するクローゼットの中身とその着こなしは、とにかく洒落ていて無駄がない。ベーシックな服をデザインと色で分け、余分な服は持たない。だけど、「ときめく」服は買っていい、という理論。ファッションという視点から、お金の節約と58歳の自分への投資について聞いてみた。

「服には消耗品と資産になるものの2種類があります。消耗品はある程度コスパのいいものを3〜5年単位で買い換えて、その都度パリッと着る。資産になるお洋服は一生手放さないというつもりで大事に着る。このふたつをバランスよく組み合わせるのが大人のファッションの楽しみ方だと思います」

今の50代はいいものを見て目を肥やし、消費してきたバブル世代。だからうまくバランスがとれるはず、と言う。

「自分を理解している年代は、トレンドに右往左往せずに自分はこの色が似合う、好きだから着る、という感覚を持ってほしい。おしゃれは自分を表すシグネチャー。私はこれ、という軸があるほうが大人の女性としてかっこいい。そうすると、服を買うことに迷わなくなるし、無駄なお金を使わないはず」

80点のアイテムを複数ではなく、100点のアイテムをひとつ買う。

自身はセール期以外の「実売期」、つまり春夏なら3〜5月、秋冬なら9〜11月に新しい服を買うスタイル。セール期に買わない理由は、シーズンを通して長く着たいこと。そしてセールではサイズやカラーが欠品になるなど、欲しいものが手に入らない可能性が。

「1シーズンの予算を立ててやり繰りしています。気に入ったものがなければ、予算は来期に繰り越します」

この“気に入ったものがなければ買わない”というスタンスは非常に重要。たとえば着まわしアイテムの定番、消耗品に当たる黒のパンツもしかり。

「同じような黒いパンツを何本も持っていると、よく穿くものとあまり穿かないものが出てきます。穿かなくなる最大の原因は、安いからと妥協して買ったものだから。80点の黒いパンツを3本買うんだったら、100点満点のパンツを1本買って、それを一定期間着たおして処分、が正解です」

着ないから傷まない、傷まないから捨てられない。クローゼットは満杯なのに着る服がない、という状態は避けたい。資産系の服の場合だって、もちろん妥協は禁物です、と輪湖さん。

「好きなものの中でも、ちょっといいな、すごくいいなというレベルがありますよね。まるで運命のように、これはもうどう考えても10振り切りました、というくらいの素敵な服にめぐり合うことがあります。そういうときは躊躇なく買う。高いからと諦めてしまう人がいますが、そこでパッと買って、中途半端なものを妥協して買わないようにするほうが、絶対にいいと思うんです」

多忙な日々の中、年に数回は必ず海外旅行に出かけるという。メリハリあるお金の使い方は、一回が数週間に及ぶという大好きな旅行でも発揮される。

「いちばんお金をかけるのは、年に数回の旅行です。」

古着店で、価格にも一目惚れして購入した’90年代の『エルメス』のデニムジャケット。「ボトムスは『ザラ』。トレンドの深いスリット入りのロングを見つけました」

年数回は海外でリフレッシュ。パリではアパルトマンで自炊。

「ふだんは基本的に一人で仕事をしているので、視野が狭くなって考えが凝り固まりがちになる。年2回の海外旅行で、刺激をもらいに行くんです。パリなどホテル代が高価な場合は、できるだけアパルトマンに泊まります。毎日三ツ星レストランに行っていたら胃もたれするので、地元のマルシェに出かけて美味しいパンやチーズを買って自炊生活を。現地の人の生活が体験できて、得するような気がするんです」

安全な株ばかり買うのではなく、買いと見込んだ銘柄にドンと投資。ただ、無駄な賭けはしない。株の投資にも似た好きなものへの出資術。センスを磨ける、大人ならではの節約メソッドだ。

「一枚一枚の服をよく見て 喜びを感じながら着ています。」

黒のジャケット、インナーのベスト、パンツともに大好きな『ドリス ヴァン ノッテン』。「真四角で大きいシルエットが、背が高くて頭も大きい私の体形を生かしてくれます」

これも節約術? スカーフのリメイク品。

輪湖さんがネットショップで手がけるスカーフのリメイク小物。使用するスカーフは『エルメス』『シャネル』『ジバンシィ』『プッチ』『サンローラン』など。「お客さまからスカーフを送っていただいてリメイクバッグを作ります」。その時に出る端切れを使って小物も作る。「古いスカーフを再生するというのも、節約かもしれませんね」。

スカーフブレス各6,000円。
プチバッグ1万3000円。
レザーグローブ1万3000円。
パイルアップブレス各6,000円。ホームページに掲載直後に常に完売の人気。https://sty04.fashionstore.jp

輪湖もなみ(もなみわこ・もなみ)さん●スタイルレシピ代表取締役、ファッションプロデューサー。女性たちの服の悩みを解決。著書に『「いつでもおしゃれ」を実現できる幸せなクローゼットの育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

『クロワッサン』1014号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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