心から好きなものを長く使い続ける。【料理研究家、牛尾理恵さん】
撮影・柳原久子 文・嶌 陽子
“心から好きなものを長く使い続けることが、節約につながります。”
洗濯ばさみひとつとってもよく吟味してから買う性分。
「両親によると、子どもの頃から“きっちり収める”のが好きだったみたいです。おもちゃを買ってもらう時も『これを買ったら、おもちゃ箱の中のおもちゃをひとつ減らさないといけなくなる』と考えていたそうですよ」
そう笑って話す牛尾理恵さん。実家だったマンションの部屋を10年前にリフォームして、夫と2人で暮らしている。一日の多くを過ごすキッチンとダイニングスペースは驚くほどものが少なく、広々と感じられる空間だ。
「10年前に引っ越してきた時から物量は増えていません。むしろ減っているかもしれないですね」
料理研究家として、忙しく過ごす牛尾さん。仕事の収支はきちんと帳簿をつけている一方、家計に関してはクレジットカードの明細などでざっくりと支出を把握する程度だという。節約を強く意識しているわけではないものの、「余計なものを買わない」という考えは、日頃から徹底しているようだ。
「たとえちょっとした日用品であっても、毎日使うものだからこそ妥協したくない。長く使えそうか、自分の好みに合っているかどうかを徹底的に吟味して、納得できるものを選びたいんです」
その一例として挙げてくれたのが、洗濯ばさみ。プラスチックの色付きのものがどうしても好きになれず、ステンレス製のものを買った結果、もう20年も使っているそうだ。
「本当に気に入ったものであれば、多少値が張っても買うことにしています。そのほうが、愛着が湧いて大事に扱うから、長持ちする。何度も買い替えるより結果的に節約になっていると思います。納得いかないものを買ってしまうと、毎日それを見てモヤモヤした気持ちになってしまう。お金もそうですが、心の無駄遣いをしてしまうと思うんです」
買わずに家にあるもので代用。 あれこれ工夫するのが楽しい。
市販の「〜用」というアイテムがあまり好きではない、と語る牛尾さん。
「掃除用の洗剤もキッチン用、浴室用などと場所別に買っていると、出費もかさむし管理も大変。それよりクエン酸やセスキ炭酸ソーダ、重曹など数種類だけ揃え、汚れの種類に応じて使い分けたほうが無駄がなく、すっきり暮らせます」
ちょっとした日用品も、欲しいと思ったら買う前にまず家にあるもので代用できないかと考えてみる。たとえば、蚊取り線香を入れる容器。市販のものを見ても気に入るデザインがない。考えた末に思いついたのが、以前に夫が買ってきたシルバー製のフィンガーボウルだった。ほとんど出番がなかった器に蚊取り線香を入れてみたところ、美しく収まった。
「20年以上前に手に入れたワインの木箱を今でも食材入れとして使うなど、家にあるもので代用することはよくあります。あれこれ考えて工夫してみた結果、ぴたっとハマるとうれしくなります」
40歳前から始めた筋トレは意外にも大きな節約効果が。
今の牛尾さんの生活にとって欠かせないのが、週に5日通っているジムでのトレーニングだ。きっかけは40歳になる前のこと。自宅での仕事が多く、運動不足になり体重が増えてしまったため、ダイエットを開始。同時にジムに通い始めたことで体づくりに目覚め、今では本格的な筋トレを続けている。
「トレーニングを始めてから食事管理もするようになり、前より甘いお菓子を買わなくなりました。ここ数年、体調を崩していないので医療費もかかりません。肌荒れも少なくなって、化粧品にもあまりお金を使わなくなりましたね」
引き締まった体やツヤのある肌、溌剌とした声が、その言葉を裏付けている。
「昔は夜も休日も関係なく、だらだらと仕事をしていたのが、今は夜にジムに行くために昼間にぐっと集中するように。休日も公園でジョギングして、リフレッシュすることができる。時間の使い方にも無駄がなくなったと思います」
『クロワッサン』1014号より
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