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生きていることの意味は美的なものです――道下匡子(映像作家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は「美しく暮らす」とはどういうことかを深掘りしてみましょう。

文・澁川祐子

1978年11月25日号「クロワッサンインタビュー」より
1978年11月25日号「クロワッサンインタビュー」より

生きていることの意味は美的なものです――道下匡子(映像作家)

「美的生活」というテーマで大々的に特集を組んでいる1978年11月25日号。その背景には、当時、流行していた「知的」という言葉に対抗し、感性を尊重する「美的」をもっと見直したほうがいいのではないか、という特集意図があります。

その巻頭インタビューに登場しているのが、道下匡子さん。映像作家であり、女性アーティストの伝記の翻訳も数多く手がけてきた道下さんは、<知は美を含まないが、美はすべてを含むでしょう>と語ります。

<美的な心>とは、道下さんいわく<衣服、住居、器具、食物、男の選び方にあらわれる。豊かで鋭敏な感性を持っているということ>。身のまわりのすべてのこと、すなわち何を選び、どのように暮らすかという、生き方そのものに「美」は深くかかわってくるということです。

また<美しい心>とは、汚らしいものに煩わされない静かな心>だといい、美的な生活を送るためには<大変政治的でなくてはならない>とも語ります。

排気ガスや、選挙カーの必要以上に大きいスピーカーの音。美的な生活を求めるならば、そうした公害や騒音に「ノー」と言いたくなる。自分対社会という関係なくしては、美的生活は成り立たないというのが、道下さんの主張です。

昨今、政治を取り巻く状況では「正しさ」の主張が目立ちます。しかし、そこに「美しさ」という視点を取り込んだら、また違った景色が見えてくるはず。「美しさ」から生き方、そして社会のありかたを地続きに考えるという見方は、いまなお一聴に値するものだと受けとめました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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