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心や胃袋を刺激される、冬の噺の一部をご紹介。│柳家三三「きょうも落語日和」

イラストレーション・勝田 文

心や胃袋を刺激される、冬の噺の一部をご紹介。│柳家三三「きょうも落語日和」

そろそろ冬の落語が頻繁に寄席の高座にかかる時期になってきました。以前、秋の落語は数が少ないとご紹介したことがありますが、冬はあべこべに数が多くて、とても全てはご案内しきれません。

まずは「芝浜」と「文七元結(ぶんしちもっとい)」という暮れを舞台にしたふたつの名作人情噺。

お客さまも噺家も特別の思いを抱くかたは大勢いるようで、ここ一番という高座や、一年を締めくくる落語会ではよくこのふたつの演目が取り上げられます。客席と演者が一体になれたときの盛り上がりや幸福感が非常に大きいんですね。もっとも、あまり特別視しすぎるのもどうかという気持ちもあります。あくまで数ある噺の中のひとつと思えることも必要でしょう。

特別という意味では「初天神」という噺。本来一月下旬と時期を想定した季節ネタなんですが、親子がああだこうだと言い合いながらもほほえましいドタバタ劇という、普遍的な内容のおかげでしょう。一年中寄席や落語会で演じられない日はないくらい、おそらく上演頻度の高さではベスト3に入る人気演目です。

そして何といっても冬の噺は「時そば」「うどん屋」「二番煎じ」「ふぐ鍋」など、食べ物やお酒で胃袋を刺激する噺が多いんですね。

そんな噺を堪能してから、寒い表へと出る。街中の看板を見て、思わず「あたたかいそばを食べて、帰ろうか」「鍋をつつきながら、一杯やろう」……。そんな気分になっていただけたら、落語日和以上の最高にぜいたくな一日になること請け合いです。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』1011号より

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