くらし

人の“和”のためのお菓子が和菓子なら、それはとてもいい名ですよね――中村汀女(俳人)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、言葉の達人のセリフから、和菓子のよさを再発見しましょう。
  • 文・澁川祐子
1978年9月25日号「私たちは和菓子について知らなすぎた」より

人の“和”のためのお菓子が和菓子なら、それはとてもいい名ですよね――中村汀女(俳人)

名店の逸品紹介から、おまんじゅうのつくり方まで。和菓子を特集した記事の巻頭には、俳人・中村汀女さん(1900-1988)のインタビューが掲載されています。

中村汀女さんは、日常の家庭生活を詠んだことで知られ、和菓子にまつわる俳句や随筆も多く残しました。日本各地の名菓を俳句とともに情感豊かに綴った名著『ふるさとの菓子』の帯には、<菓子と人とがみな故郷を持ち、思い出を持っている。この句・文集はそうした多くの《菓子への恋文》である>とあります。

お菓子に対する深い思い入れをもつ中村さんは、

<大体、お菓子に“和”なんてつけるのがおかしいんですよ。私たちが育った時代は洋菓子なんかなかったし、お菓子といえば必ず和菓子のことでした>

と語ります。洋菓子が入ってきて、それまで食べていたお菓子が「和菓子」と呼ばれるようになった。いまではあとから登場した洋菓子の華やかさに押され気味だけれども、素朴なおまんじゅうや、季節を先取りするねりきりなど昔ながらのお菓子には、日本の風土が培ってきた繊細な美しさ、味わいがあるといいます。

それらを人と一緒に「美しいわね、おいしいわね」と言いながら楽しく食べるのが、和菓子の味わいかただと中村さん。だから「人の“和”のためのお菓子」と、「和菓子」の言葉の意味を粋に再解釈してみせます。

肌寒さが身に染みるようになってきたこの頃。熱いお茶をすすりながら、彩りのよい生菓子にすっと黒文字を差し入れる。そんなゆったりとした時間が恋しくなる記事でした。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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