わだかまりを残さず、すっきり。センスある、お詫びとクレームとは。
撮影・黒川ひろみ(川合さん) イラストレーション・ナカイミナ 文・一澤ひらり
【クレーム】
感情を切り離し、冷静に状況判断。何をどうしてほしいのかを明確に。
クレームで起きやすいのが、当の本人が怒りしか表出できないこと。
「腹が立って文句を言っても、自分の不満や要求をうまく伝えられず、とにかくなんとかしてほしい、という混乱状態に陥ってしまう人が多いんですよね。まず自分がいま置かれている状況を客観的に見ることが大切です。何が不満なのか、何に困っているのかを見極めた上で、相手にどうしてほしいのかを伝える。このときに感情をむき出しにするのは得策ではありません。自分が冷静に苦情を申し述べれば、相手もそれに対してどうすればいいかを具体的に考えることができますからね」
状況を俯瞰してみる目を持つことが速やかな解決の糸口となる。
無用な感情を表す必要はない。メンタルタイムトラベルという手も。
クレームとは、自分が不満に思う正当な理由があり、相手にそれを改善してほしいと要求すること。
「怒りをぶつければ溜飲は下がるけれど、現実的な問題は何も解決しません。現状を改善してほしいと思うなら、なるべく穏やかに話したほうが相手も受け入れやすいはずです。ひとつのやり方として、問題が解決したときの未来の自分をイメージし、そこから過去を振り返るようにして現在の自分を見てみるんです。そうするといくつか選択肢が見えてくるので、それを検証するといい。心理学ではメンタルタイムトラベルと言います。人は過去だけでなく未来にも心を馳せることができるので、それをうまく使ってみるのも方法です」
言いづらいなら無理に言う必要はない。でも解決したいなら、勇気を出そう。
クレームをつけることを最初から避けてしまう人たちはけっこう多い。
「クレームをためらう人は、言ってしまったことで悪く思われないだろうかとあれこれ悩むより、言わないほうがマシって思っているんですよね。そういう人はクレームを言うこと自体がストレスになるのでしょう。言わないマイナスよりも言うことによるマイナスのほうが大きければ、そこはあまり無理しなくてもいいと僕は思います」
ただ、主張をきちんと相手に伝えられれば、解決策も見つかるし、より関係性を深めるきっかけにもなる。
「クレームも謝罪も円滑なコミュニケーションのためのスキルです。やればやっただけ上達しますよ」
『クロワッサン』1007号より
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