【山田ルイ53世のお悩み相談】会社で怒鳴られてばかりで辛いです。
撮影・中島慶子
<お悩み>
毎日仕事で怒られてばかりで、とても辛いです。
上の人たちは、変革の時! 既成概念にとらわれない考え方を! と声高に発信するくせに、会社のルールや既存の仕組みから少しでも外れた行動をとると、みんなの前で怒鳴られたり、お前はクレイジーだ等とボロカスに言われたりします。
今の会社では、したいこと(留学経験を生かした海外ベンチャー企業の調査)があり、頑張りたい気持ちもありますが、どうしたらいいでしょうか?
(なやめるジャスミン/女性/29歳の会社員、独身です。アラジンのような素敵な男性を探しています。)
山田ルイ53世さんの回答
皆の前で、「お前はクレイジーだ!」と「ボロカス」に叱責される。
もはや、『サラリーマン金太郎』の矢島金太郎、『GTO』の鬼塚英吉レベルの ”破天荒”でない限り、到底納得できる怒られ方ではありません。
そもそも、ご両人とも漫画の話です。
文面にこそありませんが、それほどの逸脱、既存のルールから外れた行動を、なやめるジャスミンさんがされるとは思えません。
仮に相談者の仕事上のミスや遅刻のようなことが発端であったとしても、皆の前で怒鳴るというのは、見せしめ感も強く、全く褒められたものではない。
厄介なのは、「俺はコイツを育てている!」、「愛情があるから大丈夫!」、「きっと伝わるはず!」と信念を持って、 ”あえて”こうした振る舞いをする方々。
未だに存在します。
大体、「変革の時!」とか「既成概念にとらわれない考え方を!」といった号令自体、ローマ時代(※あくまで筆者のイメージです)の昔から叫ばれてきた紋切型です。
そして、大抵の場合、それを声高に言う人間ほど、具体案を持たぬものです。
要は、「えいえいおー!!」と何ら変わりません。
気にしたところで、意味が無いのです。
勿論、「上の人たち」のやり方は、度が過ぎていると筆者は感じます。
一方で、相談者の「ルールから外れた行動」が、果たして結果に結び付いているのか、という点も少々気になります。
試しに、「既成概念」で検索してみると、「既成概念に関するニュース」というトピックスが出てきました。
ラグビー日本代表の快進撃を報じる記事の中では、「彼らが ”体格至上主義 ”という既成概念を覆した……」、誰かが何かの賞に輝いたことを伝える文中には、「既成概念にとらわれないデザインで○○賞を受賞した」などと書かれています。
つまり、既成概念にとらわれないことと、結果を出すことは、基本セット。
厳しいようですが、現実問題、既存のルールに背を向けたからには、もはや成功するしか組織の中で評価される道はない。
片道切符なのです。
事例がせこくて申し訳ないのですが、かつて筆者が、普通の恰好の漫才師から、貴族になろうと決心し実行した際、
「いや、そんなもん売れるか!」
「やめろやめろ!」
「お金かけて、また無駄なことを!」
と周囲の先輩方、それもキャリアが上の方からほど、全否定されました。
当時は、若手芸人が髭を蓄えるのも憚られるような時代。
ワイングラスの乾杯をツッコミに置き換える形も、意味不明だと最初は一瞥もされませんでした。
しかし、ウケれば変わります。
まあ、現在一発屋なので、あながち間違っていなかったのでしょうが、それでも一度はそこそこ売れることは出来ました。
いずれにせよ、決して、瑣末な決まり事を足蹴にすることが、変革をもたらすわけではない。
相談者は重々お分かりかと思いますが、一度省みるのも今後のために悪いことではないでしょう。
「今の会社では、したいことがあり、頑張りたい気持ちもあります」という相談者。
進退に関して筆者があれこれ口を出すことではありませんが、くれぐれもご自分の心身と ”相談”して結論を出して下さい。
山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人
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