一田憲子さんの住まい方に学ぶ。大人になったら始めたい、手間なしシンプル生活。
衣食住が無理なく回りだす、暮らしの仕組みが見えてきました。
撮影・黒川ひろみ 文・松本あかね
「自分の物差しを持つことで、 “余計な手間”を引き算する。」
ライターとしていろいろな人の暮らしぶりを取材する一田憲子さんは、自他共に認める“真似しんぼう”だ。
「素敵な人の暮らしをのぞいて、真似してみるのが大好き。取材で会った人が漆のお椀を使っていたら、私も同じものを持てば、その人みたいな暮らしができるんじゃないかと思ったり」
けれどあるとき、はたと気がついた。
「いっぱい物は持っているのに、使う時間がない。せっかく集めたのにちっとも味わってないよって」
なぜ味わう時間がない? 振り返ってみて浮かんだのは、暮らしに余計な手間をかけすぎている自分の姿。
「心地いい生活ってこうだよね、丁寧に暮らすってこういうことだよね、と理想形を描いて、それに自分の暮らしをあてはめようとしていました」
「そこそこ続けられる仕組み」 作りで、暮らしが変わった。
憧れの人の暮らしをいくら真似してもいつも三日坊主。悩んだりもしたけれど、やがてあきらめの境地に。
「そもそも『手間をかけて丁寧に』というのは私に向いていなかったんです。根が几帳面じゃないから」
代わりに今の自分に続くことはなんだろう?という視点で、衣食住を見直すようになった。
「例えば、夕食は家で食べたいけれど、時間をかけて新作料理を作ったのに、おいしくないと言われるのはいや。それより同じものを繰り返し作る。余計な手間をかけないで、おいしいと言われる確率を高くする。それが肝心」
最低これだけすれば心地よく暮らせるという、できることをそこそこ続けられる仕組み作りへと舵を切ったら、とてもラクになったと一田さん。
「これだけすればいいということが決まると、それ以上しなくていいから」
毎日にゆとりが生まれ、物とのつきあいも良い関係が続いている。
「手間をかけることが良いことだという頭は捨てて。本来、暮らしは自分が心地よければそれでいいはずだから」
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