松坂さんにとって私生活の大きな変化は7年前、60歳の時に、お母さんがひとり暮らしをしていた実家へ家族全員で引っ越したこと。
「その1カ月前から近所の野良猫がうちに来るようになっていたので、その子も連れて行ったら母がすごく気に入りましてね。引っ越した日は一緒に布団の中で寝ていました(笑)。母はもう90を過ぎていますが、ありがたいことに元気でいてくれています。夫と娘たちに協力してもらいながら、ヘルパーさんの力もお借りしてなんとかやっています。介護は借りられる手は全部借りて、そのぶん笑顔で接することが大切だと実感しています」
とくに昨年、『まんぷく』の出演が決まってからは撮影のために約10カ月間、東京の家を離れて大阪暮らしを余儀なくされることに。
「母に伝えると、『行っていらっしゃい』って、笑顔で背中を押してくれたんです。それで出演する決心がついたのですが、撮影は月曜から金曜までなので、金曜の夜か土曜の朝に新幹線で東京に帰って、日曜の夜にまた大阪へ戻るという生活が毎週続きました」
そんなハードなスケジュールの中で松坂さんが演じた『まんぷく』の母親・鈴さんは、頑固で思い込みが激しくて口うるさいけれど、愛嬌があって憎めない、そんな可愛い人だった。
「母の生命力、がんばり方とか太陽みたいに笑うところとか、全部役作りに反映されて、困った時に相談すると的を射たことを言ってくれるし、母を頼りにやってきた過去を思い出しながら演じていましたね」