お金は貯めるものではなく、“上手に使う”ためにあります。
撮影・三東サイ 文・大澤はつ江
50代は貯蓄について真剣に考え始める年代であると沖幸子さんは言う。
「親の介護費用、退職後の収入減、年金生活への不安などが現実味を帯びてくる年代だからです。40代は仕事のキャリアを積んだり、子育てで忙しい時期でもあり、貯蓄の余裕がない人が多い。でも、現状を把握し、この先、お金とどう向き合っていくかを考えるのに早すぎるということはありません」
情報社会といわれて久しい現在、お金に関する話題も多々飛び交っている。
「情報過多で、それに振り回されて不安を抱え込んでしまう人も。心配すればキリがない。お金はあくまで何かの目的を達成するための手段で、貯めるものではなく、上手に使うためにあると私は思います」
とはいっても、ただ使うだけでは上手に、とはいえない。
「自分が本当に必要と思うことに使うのが上手な使い方。見栄や体裁のためにお金を使うなんて言語道断です。不思議なことにお金は賢く使う人に寄ってくるんです」
では、どのような暮らし方でお金を使い、貯めればいいのだろうか?
「まずは、あらゆる場所の整理整頓を心がけること。身辺が片づけられない人は、無駄な買い物が多くなりがちです。例えばキッチンの調味料。置き場所がバラバラだから二重買いしてしまい、賞味期限切れになる。洋服はクローゼットなどに入りきらないと収納家具を購入し、収納場所が増えたことに安心する。これでは何も解決せず、ただ出費しただけです」
持っているものが分からないから、買い物が多くなり出費がかさむと。
「一度、持ち物の整理をしてみると、必要なものが分かります。私は、服はクローゼットの7割、食器類は食器棚の6割収納を目安に整理しました。これからの生活は、お気に入りだけでいいと判断したからです」
物が整理整頓されれば、全体が見える化され、余計なものを買わなくなる。
「家じゅうがすっきりすると掃除がしやすくなり、物が邪魔しないので風がよく通ります。湿気も少なくなり、カビや錆などの発生が防げますから、家が長持ちします。メンテナンス代が浮くことにもなり、その分貯蓄に回せます」
こうして貯まったお金は生かす。
「品性のあるお金の使い方をしてほしい。私は500円玉貯金をしているのですが、1年間で貯まった半分を寄付して“幸せのおすそ分け”をします。ケチになっては駄目。身の丈にあったお金で豊かに暮らすことが重要です」
「現金支払い主義。」
昨今はキャッシュレスの時代だが、沖さんは日常の買い物は現金で支払う主義だ。
「現金を持ち歩かないほうが便利、といわれますが、クレジットカードや電子マネーはバーチャルの貨幣です。お金が見えない分、つい気持ちが大きくなって散財しがち。現金支払いであれば、今、財布にいくらあるかが分かり、浪費が抑えられると思います」
高額なものを購入する場合はクレジットカードを使用するが、
「利子がつかない一括払い。ポイントは貯めて活用します」
「玄関は暮らしの鏡。床は豊かさを表す。」
「ドイツでは床に物を置くとお金が貯まらない、といいます。広々とした清潔な床は豊かさのシンボルなんです。床に物が散乱していると掃除もしにくく、埃が溜まります。そこに湿気が付着し、カビの発生を招き、家が傷みます」
また、床に物があるとつまずきやすく、怪我をすることも。結果、医療費がかさんでしまうことに。
「人は動きがスムーズになると、行動的になり、集中力も増し、経済的にもアップします」
同様に玄関は客人を迎える場でもあり、家族が出入りする大切な場所だ。
「子どものころ『靴は脱いだら揃えなさい』と母から厳しくしつけられました。靴が乱れている家はだらしがないので泥棒が入りやすいと。一理ありますね。玄関は快適な暮らしを担う重要な場所と心得て」
「掃除道具は使う場所へ。タイムロスもなし。」
掃除道具は簡単に取り出せるよう、使う場所に置くと便利だ。
「掃除のたびに道具を取りに行くのは時間の無駄。埃に気が付いた時にさっと掃けば、清潔感が保てます。あとで行おうと思うから億劫になり、汚れが溜まってしまう。その場所に道具があれば、その面倒くささが軽減します」
掃除道具をインテリアのように見せてしまうのも沖さん流。
「ドアノブに小さめの箒を掛け、チェストの上などの掃除に使います。使用後は埃を払い、常に清潔にしておけば、見苦しくなく、不快感を与えませんよ」