【前編】いる・いらないを3秒で決断!1日30分から始められる整理術。
撮影・土佐麻理子 文・板倉ミキコ
心地よい暮らしを実践するには、まずは家じゅうの片づけをしなければと考えると、何から手をつけていいのか途方に暮れてしまう……。そんな人は、“整理”と“収納”を別ものと捉えることから始めてみては、と本間朝子さん。
「整理は“必要なものを選ぶ”こと。収納は“必要なものを出し入れしやすく収める”ことです。整理ができていなければ収納はできないのに、一気にものを収納しようとするからうまくいかないのです。整理は感情の問題で、収納はテクニックの問題です。まずはものとしっかり向き合い、取捨選択できる感情の処し方を身につけましょう」
苦手な人でも、ものと向き合いやすくなるようにと考えたのが、本間さんが近著の付録につけた“片づけシート”。
「いきなり大きなエリアに取りかからず、引き出し1段、一日30分から始めればいいんです。少しずつ整理する場所を増やしていけば、自分がものに対してどういう感情を持ちやすいかがわかり、取捨選択する“整理”のコツが次第に身についていきますよ」
本間さん直伝・失敗しない整理の手順。
どれくらい減らすのか、目安を決める。
現状の量、収納のキャパシティを把握して「クローゼットの衣服を8割にする」など、どれくらい減らしたいのか具体的な目標を定める。これで取捨選択のハードルが決まり、整理しやすくなる。
いる、いらない、迷っているを3秒で判断!
片づける場所のものを全て出し、シートの上でいる、いらない、迷う、の3種類に分ける。1つずつ手に持ち、3秒を目安に判断。基本は1年(服は2年)以上使っていなければ、“いらない”ものへ。
いる、いらないの判断を鈍らせるありがちな5つの悩み。
いらないものと決別できない思考癖を解説。解決策を読めば、整理のスピードが上がる。
●また使うかも…
「たられば」はやってこない。
捨ててしまったものを活用できる場面が訪れ、実際に後悔した経験がある人ほど「たられば」の思考が強くなる。しかし、「急な来客があったら」「いつか痩せれば」ととっておくと、本当に役立つものが使いづらくなる。代用できるものはないか探すのも手。どうしてもすぐに捨てられないなら、保管期限を決めておくといい。過去のものにとらわれず、今のあなたが素敵に見える収納、気持ちよく暮らせる空間を作ることに気持ちを切り替えて。
●罪悪感がある…
未来のために“今”捨てる。
整理は、新しい生活を始める第一歩となる行為。そのために、定められた方法でものを捨てるのは罪ではない。むしろ、これから必要なものだけに囲まれ、捨てないで済む生活に変える未来のため、今捨てるのだと考えて。捨てた経験をすることで、自分に必要ないものがわかり、失敗を減らせるようになる。もらったものなどを処分するのは特に気が引けるが、ものの形は無くなっても、気持ちなどは違う形で生きていると考えるといい。
●もったいない…
今すぐに使わないほうが無駄!
もったいないと思うなら、今すぐ使い始めるべき。箱に入っているなら取り出し、衣類ならとにかく着てみる。食品なら食べるスケジュールを具体的に立てよう。そこで今すぐ使おうと思えないものなら、結局この先も使わないとジャッジできる。また、とりあえず使ってみることで合わない、使いこなせないものだと再確認もできる。このアクションで、捨てたらもったいないと思う気持ちが昇華され、満足して手放すことができるはず。
●高かったから…
今同じものを買うか自問自答。
当時と同じ値段で今買うか、なぜそれを買ったのか、なぜ今使わないのか、それがないと困ることはあるのか……。これらの疑問を自分に問いかけてみる。値段だけではない、自分にとって価値のあるものなのかを改めて考えるきっかけに。また、買った当時の値段ではなく、今買い取ってもらうといくらになるかを知るのも、手放す意志を固めてくれるやり方。高価であっても使わないなら、他人に譲るのも一つの選択肢。
●後悔しそう…
なんでもとっておくほうが危険。
ストックや緊急時の備品など、ない時に後悔したくないと思うあまり、キャパシティを超えるほど買い込んでいる人も。災害などが心配なら、むしろ整理が必要なのだと心得て。どれくらいの量を所有しているか、何がどこにあるかわからず、すぐ取り出せないなら結局備えは無駄になる。ストックはプラス1あれば充分。また、なんでもとっておくことと災害の準備は別もの。食料は、災害時にも大丈夫な必要量を用意しておけばいい。
本間朝子(ほんま・あさこ)さん●知的家事プロデューサー。家事を効率化したメソッド“知的家事”を考案。毎月、無料セミナーを開催している。近著に『本間式 置くだけ片づけ』(エクスナレッジ)が。
『クロワッサン』1001号より