旅するような暮らしを実践中! 松尾たいこさんの三拠点生活。
撮影・土佐麻理子
古民家を改装した住まいで 自然に囲まれた陶芸制作。
東京から新幹線と特急列車を乗り継いで敦賀へ。そこから車で約30分。静かな海沿いの町・美浜町(みはまちょう)に、松尾たいこさんの福井の家がある。風格ある古民家は、まさに目の前に美しい日本海の若狭湾が広がる素晴らしい立地だ。
「福井というとみんなに遠いと思われがちですが、東京の自宅からドアtoドアでも3時間半ぐらい。案外すぐ着くでしょう」(松尾さん)
しかしそこにある景色は、東京での日常で見るものとはまったく異なっている。
「絵以外の制作活動がしたくて」と、数年前から陶芸を始めた松尾さん。窯を持っている知人がいた縁で、越前焼で有名な福井・越前町にアトリエと1LDKの住まいを借りたのが2015年のこと。広いアトリエは作陶に没頭するには申し分がなかったものの、やはり福井が気に入って頻繁に訪れるようになった夫(ジャーナリストの佐々木俊尚さん)と二人で住むには、居住スペースが狭すぎる……。と、新たな住まいを探し始めたところで、『NPO法人ふるさと福井サポートセンター』による空き家マッチングというシステムに出合った。
「空き家の利活用を進めるというプロジェクトの一環で、美浜町にある移住体験施設に、多拠点活動の場として住んでみませんか、とお誘いいただいたんです」
増え続ける空き家には、伝統的な古民家も多い。そのままだと放置されてしまうような物件を実地調査により見つけ、建築計画から施工、内装デザインまでチームとなってリノベーションするのが、空き家の利活用だ。松尾さん夫婦のようなクリエイターたちの多拠点活動の場として、そういった物件の仲介も進めている。
古民家の趣を損なわない内装。家に置く物もなるべく最小限に。
松尾さんが紹介されたのは、元は民宿の母屋だったという海沿いの古民家と、その離れ。
「家は既にリノベーションされていて、内装もすべておまかせでした。といっても、もともとの雰囲気を活かすようあまり手は加えられておらず、建具など再利用できるものはほぼ以前のまま。工業用のライトや廃校の工作室の椅子など、置かれていた家具にも工夫がありました。越前町で使っていた私の家具も持ち込んでいますが、物は極力、減らしています」
そう、この家に入って思うのは、とにかくスッキリしていて、無駄なものがないこと。松尾さんは、ここ福井のほかにも、東京と軽井沢に家を持つ3拠点暮らしを実践しているが、どの家もこのように整然としているのだろうか。
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