食べて痩せる、元気になる。「大豆パワー」の秘密。
撮影・森山祐子、青木和義 文・高橋顕子、越川典子、青山貴子
大豆中心の日本の食生活を、今、世界中が追いかけています。
「大豆のおいしい、新豆の季節がやってきました!」
とうれしそうに旬の訪れを教えてくれる石渡尚子さん。大豆の研究を長年続けている「大豆センセイ」だ。
「大豆の何が一番いいって、何よりもおいしいことなんです」
“今年豆”が店頭に並ぶ秋は、「茹で大豆」を作るのが毎年の楽しみ。
「私の場合、茹でながら食べるっていうより、食べながら茹でてる感じね。茹でたての大豆は絶品です」
作り方も簡単。大豆の5倍の水に一晩浸して、水を替え、鍋でコトコト40〜50分。茹でたてはそのまま。サラダにもスープにも。栄養成分たっぷりの茹で汁は味噌汁の出汁として。味が落ちる前に小分けして、汁ごと冷凍しておき、毎日食べるのがおすすめ。
大豆は天然のマルチサプリ。「まるごと食べる」を習慣にしよう。
白い肌、すっと伸びた背筋。大豆愛が止まらない、よく通る声。
「基本、元気です。20代の学生に負けないくらい元気だと思います(笑)。でも50歳前後に、今までにない体の変化が起こって、どうしたんだろうと、戸惑った時期がありました」
通勤の徒歩10分で汗が30分以上も止まらない。何でもないことでイライラが抑えられなくなり、感情的に怒ってしまう。血圧も上がってしまった。
「あ、これが更年期ってものなのかしら……と、すぐに婦人科を受診しました。ホルモン補充療法(HRT)を開始してから2週間で汗は引くようになり、怒りもコントロールできるように。血圧も上150近くまで上がっていたものが、120弱をキープできるまで下がりました。私には女性ホルモンが必要だったんだと、納得しました」
更年期ケアに期待大の大豆イソフラボン。
素早く元気を取り戻した背景には、長く続けてきた大豆生活もあった。
「私の場合、大豆に含まれる大豆イソフラボンから『エクオール』が作れる体質だったことが大きいですね」
エクオールとは、大豆イソフラボンの代謝物で、女性ホルモンに似た働きをする物質。エクオール産生者の石渡さんは、大豆を食べることで更年期症状の緩和が期待できる体質。しかし、エクオールが作れる日本人女性は2人に1人といわれている。
「エクオールが作れるか、作れないかは腸内細菌叢(そう)の違いによるものということはわかっていますが、何をすればエクオール産生者になれるかは解明されていません。食物繊維や穀物、魚、大豆を摂っている人に多いという結果もありますが、まだ研究段階です」
大豆を食べているのに更年期症状が改善しない人は、エクオール非産生者ということも。最近では、エクオールを手軽に摂取できるサプリメントも市販されており、石渡さんも大豆が摂れない時には利用しているそうだ。
「ただし、サプリメントはあくまでも補足。基本は大豆食品を摂って腸内環境を整えることが大事です」
大豆は、たんぱく質と脂質、炭水化物がバランスよく含まれているだけでなく、鉄分や食物繊維なども豊富な優秀食材。石渡さんは普段から、「大豆は天然のマルチサプリ」と提言している。
「人の体内で作れない成分のうち、大豆に含まれていないのはビタミンAとCくらい。緑黄色野菜を一緒に摂れば、基本的な栄養素はほぼ揃うんです」
更年期が気になる女性だけでなく、あらゆる年代の女性、男性にも毎日の大豆を習慣にしてほしいという。
「欧米だけでなく、アジア、アフリカなど世界中の学者が大豆のチカラに注目しています。心血管疾患や認知症など超高齢化社会に向けた研究も続々と発表されています」
健康を支える大豆の機能性成分
大豆イソフラボン
体内に入ると女性ホルモン・エストロゲンと似た作用を発揮。更年期症状の軽減に期待。
α-リノレン酸
代表的なn-3系脂肪酸。体内でEPAやDHAに変換され、冠動脈疾患の進行を抑える。
カルシウム
骨や歯などを作る成分。木綿豆腐半丁は、牛乳コップ1杯分のカルシウム量に相当する。
マグネシウム
カルシウムやリンとともに骨や歯の代謝に必要な成分。ストレス緩和や精神安定作用がある。
たんぱく質
血液、筋肉、骨、ホルモンや免疫物質などを作る栄養素。9種の必須アミノ酸を含有。
レシチン
細胞膜や神経組織の働きを支える栄養素。認知症や動脈硬化の予防が期待できる。
食物繊維
食後の血糖値の上昇を抑制する不溶性食物繊維と、腸内環境を整える水溶性食物繊維を含む。
大豆オリゴ糖
腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える。蒸し大豆に多く含まれ、納豆には含まれない。
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