白湯で、頭痛、便秘、イライラを解決する。
インドの伝承医学、アーユルヴェーダは「生命の科学」といわれ、健康な体に必要なものとして消化力を最も重視する。
「消化力とはつまり食べ物を消化する力のことで、自分の消化力に見合った食事をきちんと摂ることが健康の基本とされています。でも自分の消化力以上のものを食べ過ぎているのが、いまの日本人の大半の現状。そうすると、体の中にアーマという未消化物が増えてしまうことにより、さまざまな不調が生じます」
と、〝アーユルヴェーダ案内人〟のくれはるさんは説明する。
「アーマが体に溜まると疲れやすくなったり、やる気が起きなくなったり、どんどん不調をきたしてやがて病気を発症します。この乱れを正すのが白湯です。胃や内臓を温めて、消化機能を促進させ、体内に溜まった老廃物を排出してくれるんです」
このメカニズムゆえに、白湯が冷えや便秘に効果があるといわれている。
白湯の作り方
水200㎖を鍋に入れて、フタをせずに沸騰させる。65℃以上(フーフーしないと飲めない温度)で飲む。150~250㎖で沸かすのがよいとされる。
湯冷ましの作り方
水800㎖を鍋に入れて、蓋をせずに沸騰させて10分沸かし続け、火を止めて常温まで冷ます。冷める間に蒸発して600㎖程度になる。
冷え性の女性に効果絶大、寝る直前のアツアツの白湯。
「インドの古典書には、どこの水を使うか、沸かす時間、飲み方などによって、白湯の効能が異なることが記されています。そこで私も参加している日本アーユルヴェーダ研究所の白湯研究会では、古典書に従って、沸かし方、飲むタイミングなどを、約220人の方たちに協力していただいて調査を行いました。その結果、白湯は健康に役立つと実証することができたんです」
白湯の定義にはアツアツの白湯のほかに、湯冷まし、煮詰めた白湯も含まれる。
「季節を問わずに効果があるのは、夜寝る直前のアツアツの白湯です。お腹がポカポカと温まって睡眠が深くなり、翌日はすっきりと目覚めることができます。胃腸がきれいに浄化されて、食欲を高めるので朝ごはんがおいしいんですよ」
アツアツの白湯は冷えに効果があるのはもちろん、むくみやだるさが気になるときは日中500㎖ぐらい飲み、便秘のときは食事をしながら飲むと改善できるという。
自分の状態に応じて、 白湯は飲み分けることが大事。
「白湯はいまブームになりつつありますが、誰にでもアツアツの白湯がいいとは限らないことがわかったんです。たとえば更年期のイライラやホットフラッシュに悩んでいる人は熱が体内にこもっているので、熱を余計に溜めこんでしまいます。でも湯冷ましを飲めば、体に溜まった熱や強い感情を尿とともに排泄することができます。つまり、白湯は体調や抱えている不調によって飲み分けることが大事なんです」
頭痛や生理痛など、自分の悩みに合わせて、表(下参照)の用法、用量を参考に、白湯を1週間飲み続けてみよう。悩みは改善されるはずだ。
「とくにこれからの暑い季節は消化力が一番落ちるときなので、白湯にスパイスを加えてパワーアップさせるのも方法。クミンは食欲増進になるし、コリアンダーやカルダモンは消化力を弱らせずに清涼感をもたらします。なかでもトリカトゥという、黒こしょう・長こしょう・乾燥しょうがの3つの辛味を合わせたスパイスは最強の消化促進剤。ただ、体に熱がこもっているときは控えてくださいね」
白湯に使う水はその土地のものがベスト。水道水でもいい。
「アーユルヴェーダは実践科学です。白湯には副作用がないので、まず飲んでみて得られる効果や変化を感じてみてください」
【コリアンダー水】
〈作り方〉水400~500㎖にコリアンダーシード小さじ3杯を入れて、半日から一晩浸水させる。ミントを浮かべて飲むと爽やか。「灼熱感を抑えます。冷蔵庫に入れると胃腸が弱るので常温で」
【カルダモン+白湯】
〈作り方〉グリーンカルダモン3粒のさやに切り込みを入れるか、種が少しこぼれる程度に叩く。鍋に水200㎖とカルダモンを入れて、蓋をせずに沸騰させ、火を止めて常温まで冷ましてから飲む。
【クミン+白湯】
〈作り方〉ティーポットに白湯200㎖とクミンシード小さじ山盛り1杯を入れ、クミンが沈むまで蒸らす。「腸の蠕動運動を促すので、カチカチ系の便秘に効きます。子宮の浄化にも」
【トリカトゥ+白湯】
〈作り方〉黒こしょう・長こしょう(ピパーツ)・乾燥しょうがをすりつぶして粉末状にし、同量を混ぜ合わせてトリカトゥを作る。白湯200㎖にティースプーン半分程度のトリカトゥを混ぜて飲む。
『クロワッサン』930号より
●くれはるさん アーユルヴェーダ案内人/「アーユルヴェーダ・ライフスタイル・カウンセラー」認定取得。日本の暮らしに合った、誰にでも親しめるアーユルヴェーダ習慣を広めるべく活動中。
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