からだ

椅子から立たせるなど、介護の現場で役立つ動きをマスターしよう【介護術入門】。

  • 撮影・岩本慶三 文・天田 泉  モデル・くらさわかずえ スタイリスト・高島聖子 ヘア&メイク・村田真弓

動けない人の介助は、一体化することが大事。

寝たきりの人などの介護にあたる場合、移動の介助は日常的に欠かせません。介護者にとっては身体的な負担が大きく、腰痛などカラダを痛める原因になりがちです。

しかし、正確な動き方を知っていれば、力がない人も少ない負担で行える、と岡田さん。そのとき重要なのは、介護者と被介護者が一体化することです。

「自分で動けない人を介助するときには、介護者と被介護者の身体を近づけて、しかっりと密着することがポイントになります。身体の間にスペースがあると、お互いの動きが伝わらず、介助技術がいかせなくなってしまうからです」

たとえば、ベッドから車椅子へ移動をするときは、相手と自分の身体を隙間なく密着させます。

「相手としっかり一体化できると、介護者の動きが被介護者にスムーズに伝わり、動作を共有できるのです。すると、今までむずかしいと思っていた介助も、想像以上にラクにできるものです」

一体化すると、お互いの力は引き出されて、余計な力が必要なくなります。

「手応えのない状態が、お互いにとっていちばん心地いい介護だと、私は思っています」

逆に、介護者が力任せに持ち上げようとすると、被介護者も身体に力が入って、ともに緊張状態に。

「それでは、お互いの潜在的な動きは封じられてしまいますし、無理が生じて腰痛など、身体を痛めることにもつながりかねません」

(いよいよ実践2)【ベッドから車椅子へ移動させる】

1人で行うには、難易度の高いベッドから車椅子への移動。介護者が被介護者と一緒にベッドに座って行うと、安定してお互いの負担も軽減できる。

(1)ベッドに座り、被介護者の両ひざの裏に、自分の片ひざを差し入れる。

(4)被介護者の腕の下から背中を抱え、もう片方の手で腰を抱えて、しっかりとカラダを密着させる。

(3)被介護者の前傾をゆっくりと引き出していく。すると、被介護者のおしりが徐々に上がってくる。

(NG!)
介護者と被介護者の骨盤と骨盤の距離が浅く、離れていると安定しない。

(4)ひざの上に被介護者を乗せ、片手で車椅子を引き寄せて被介護者を座らせる。

(5)被介護者を車椅子の座面奥まできちんと座らせる(介護者のひざはそのまま)。

(6)被介護者の姿勢を調整したら、介護者はそっとひざを抜く。

(7)車椅子への移動、完了!

車椅子は、手すりが上がるタイプを。

車椅子を準備するときは、手すりが上げ下げできるものを選ぶと、ベッドやトイレなどの移動がスムーズ。「車椅子をはじめ、必要に応じて介護リフトなどの介護福祉機器を取り入れながら、カラダの負担を軽くしましょう」(岡田さん)。

岡田慎一郎

岡田慎一郎 さん (おかだ・しんいちろう)

理学療法士・介護福祉士

独自の身体介助法を模索、古武術の身体運用を参考に「古武術介護」を提案。近著に『身体を痛めない介護術』(中央法規)。

『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)

1 2
この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

人気記事ランキング

  • 最新
  • 週間
  • 月間