からだ

認知症の検査ってどんなことをするの?

詳しい検査は認知症専門外来で、経過観察は地域のかかりつけ医に診てもらうなど、連携をとりたい。
認知症外来専門「のぞみメモリークリニック」の木之下徹さんに、認知症の疑問を聞きました。
  • 撮影・岩本慶三 文・殿井悠子 

のぞみメモリークリニックの場合

1.予診を受ける
待合室で看護師の予診を受ける。出身、学歴、職歴、世帯状況、既往歴など、これまでのことや、いま気になっていることを訊かれる。人生をまるごと驚くほど細かく質問される。

2.血圧、体温、肺の機能を測る
体調のチェック。指先に大きなクリップのような物を挟んで、酸素飽和濃度といって酸素が体の隅々まで行きわたっているかを測る。

3.ひじやひざをポコンとたたく
予診をもとに医師からの問診。聴診器で胸の音を聞いたあと、運動にかかわる神経に問題がないか、小さなハンマーのようなもので反応をみる。

4.医師が言うとおり目を動かす
医師が上を向いて、横を向いてと言うとおりに目を動かす。目の動きを確認する。

5.医師がつくる手の形をまねる
医師が両手で影絵のようにいろいろな形をつくるので、同じようにやってみせる。

6.足のむくみをチェック
靴下をぬいで、ふくらはぎのあたりのむくみを医師がチェックする。むくみ具合から、心臓や腎臓に問題がないか、生活状況などをチェックする。

7.認知機能の検査を受ける
個室で1対1で質問に答える。最もポピュラーな長谷川式と言われるものを最初に受ける。見せられた物の名前を言ったり、言葉をいくつか覚えて復唱するなど、およそ30分で終わる。

8.うつの検査を受ける
何もかも面倒だと思ったりするかとか、ひとりぼっちだと思うかといった質問を口頭でされ、はい、いいえ、で答える。

9.血液検査をする
脳だけではなく、全身の健康状態もあわせて診る。高血糖や高コレステロールではないか。甲状腺やビタミンについても認知症に関係する数値をチェックする。

10.MRIの撮影をする
脳の萎縮、脳梗塞の痕、出血がないかを画像で確認。仰向けになって、耳栓をしたり、頭を固定してもらい、撮影スタート。寝台がスライドしてドームの中に頭部が入る。約30分で終了。

11.検査結果
MRIの画像を見せてもらいながら、脳に萎縮がないか、出血や脳梗塞がないかなど、説明を受ける。神経心理検査の結果から、どういう脳なのか、得意、不得意を説明される。

=====

認知症の検査は、脳の細胞をとって顕微鏡で見ることはできない。MRIの画像や、記憶力などのテスト、健康状態など、総合的に見て判断する。

初診では、平均的な数値と比較し、現在の状態を把握する。大切なことは、現在の状態から半年や1年後にどう変化するか、経過観察をすること。急激な変化がある場合、脳内の出血、梗塞、腫瘍、あるいは薬などが原因で起きている可能性もある。

●のぞみメモリークリニック

カフェコーナーのような装いで、いつでも気軽に相談にのる。認知症本人だけの寄り合いも開催中(現在は新型コロナウイルスのためお休み)。医師も看護師も白衣は着ない。

東京都三鷹市下連雀4-2-8
TEL. 04-2270-3880
http://www.nozomi-mem.jp

木之下 徹

木之下 徹 さん (きのした・とおる)

1962年生まれ。東京大学医学部保健学科卒業。2014年、東京・三鷹に認知症外来専門「のぞみメモリークリニック」を開業。著書に『認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由』(講談社)。

『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)

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